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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第4話『命運尽きず!絶望の淵に放たれた一矢!』
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神殿の壁一枚が、なんとも薄く感じられるだろうか。
自分たちを殺しに、奪いに――
窓を除けば、外に敵、敵、敵、敵だ。壊れた家屋が散乱する光景を見て「兵隊さん達……怖い」と子供達は嗚咽と言葉を漏らしていた。
いま、セレスタの町は彼らに焼かれ、壊され、奪われている。

「……ティグル様」

何かしなければ。そうティッタは思うのだが、訪れた現実の衝撃と悲しみで、恐怖で体が動かない。
無力を痛感し、一筋の涙をこぼす。その涙が熱く感じたのは、神殿に閉じこもっている人が助けを求めているのに、自分には何もできない悔しさと恐怖からくる為だ。
少女の腕の中には、ヴォルン家に伝わる家宝である黒き弓が握られていた。

「あたしにも……ガイさんみたいに……戦う力と勇気があれば」

2階の窓から、町の惨状を見つめていたティッタは、つい渇望と嫉妬じみた言葉を出した。
獅子王凱。ヴォージュ山脈に集会所(アジト)を構えるドナルベイン一派を蹴散らし、物の(もののけ)の類と思われる蛙の魔物、ヴォジャノーイを退けた青年その人である。
その人智を超越した力を持つ青年は『黄金の鎧』を纏い、ティッタの視界で獅子奮迅の戦いを繰り広げていた。
逃げ遅れた人に刃が振り下ろされようとした瞬間、ティッタは思わず目をつむりそうになる。しかし、すかさず凱が割り込み、逃げ遅れた人を庇うように現れて凶刃を防ぐ!
ウィルナイフと敵兵の剣と鍔迫り合い!
長さで不利な翆碧の短剣で凱は難なく切り返し、敵兵の溝を忌々しい鎧ごと薙ぎ払う!

「早く逃げろ!」「は……はい!」

凱に意識を奪われて、敵兵は糸が切れた人形のようにだらりと地に倒れ込んだ!
危機的な場面で在りながら、紙一重であの領民の生命は助かったのだ。その光景を見て、ティッタは極度の不安の中で僅かな安堵を得た。
絶望の淵でアルサスに生きる民はもがきながら、一人の青年のまっすぐな姿を見据えている。
幸い生命を落とした領民はいないようだ。血だまりすらも存在していない。

「ガイさん……」

――そんな凱の戦う姿に、ティッタの心は励まされ、そして少しずつ勇気付けられていた――










――美しい女は丁重に扱え!大事な売り物はあまり殺すなよ!では行けぇ!!――

このような欲望を膨らませる指令を出すのは、テナルディエ軍の総指揮官ザイアン=テナルディエ。
テナルディエ軍の歪んだ陽気さが、逃げる人々を嘲笑う。
古くからの名門テナルディエ家は、弱者を糧とする理念を以て――
ガヌロン家は、同族でさえも狂気の輪に巻き込み――
そう、ブリューヌの双璧を成す貴族は人道的見解に180度目を背けている。いや、始めからそのような、日本の自衛隊のように他者を介護的観点に見る概念は存在していな
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