暁 〜小説投稿サイト〜
魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
ブリューヌ激動編
第3話『約束の為に〜ティッタの小さな願い』
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『力』がなければ、『守りたい何か』にすがることはできない。
ただ『力』を振るうだけでは、『守りたい何か』に気付くことはできない。
凱は自分の手のひらを胸に当てる。

「守る為に力が欲しいなら、俺が『力』となる!あとは君の気持ち次第だ!聞かせてくれ!もう一度!君の本当の気持ちを!」

権力争いの道具に使われるのか、そうでないか、一途の不安は、結果的に凱の力もティッタの願いも飲み込んでしまう。
でも、守りたいと想う気持ちまでは、決して飲み込めない!少なくとも、凱はそう信じている!

「う……」

ダメ。感情が堪えきれない。

「うあああああああああああああ!!!」

ティッタは、思いのままに涙を流した。
小さな心の堤防が、ヴォルン家の侍女としての責務が、ティッタの涙をせき止めていたのかもしれない。そう思えてならない。

「力が……ティグル様の……みんなの居場所を……守りたいです……ガイさん……」

泣きじゃくる少女の背中をそっと叩いて頭をなでる。凱は小さく「絶対に……守ってみせる」と呟いていた。対してティッタは「はい!……はい!」とくしゃくしゃの涙を押し付けていた。
強い心と弱い力のティッタと――
強い力と弱い心の獅子王凱が――
二つの心を重ね合わせ、二人は新しい時代を切り開こうとしていた。

『力』は所詮、ただ『力』でしかない。

例え、凱が『人を超越した力』の振るう先が分からなくなったとしても――

ティッタの『想い』が、凱の『力』の振るう先を、教えてくれる。何度でも、示してくれる。

だから、凱は『力』を振るうのだ。やがて己の倒れるその日まで――
















――そして、運命の朝を迎える――

――テナルディエ軍は、2頭の竜を引き連れて、とうとうアルサスに土足で踏み込んできた――

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