暁 〜小説投稿サイト〜
魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
ブリューヌ激動編
第3話『約束の為に〜ティッタの小さな願い』
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。でも、自分の想いをぶつけるには、こう聞くしかなかった。
分かってほしい。あたしの想いを。
会いたい。ただその一心を。ティグル様の居場所を護る。守りたい。
本当を言えば、とても怖い。今でも逃げ出したいくらいに。怖いから、あたしは逃げることは出来ない。もう二度と会えない方が、もっと怖いから。

「ティッタ……俺は」

くだらないといった自分は、一体何なのだ?自分の理想をただ押し付けて、この子の芯の強さを分からなかった愚者でしかない。
帰ってきたティグルに相応しい言葉は、「お帰りなさい」だ。決して「さようなら」ではないはずだ。
凱、お前はどうする?獅子の牙を向ける相手は?誰に?何のために?
決められない。いや、そうではない。答えはもう出ているはずだ。
その道のりは……もう見えているはず。

――この少女の勇気に、俺は答えなきゃいけないんだ――

健気で純粋な想いが、無意味に『光』となって消えていく――そんなこと……見過ごせない!
見過ごせない!どうして……見過ごすことが出来ようか!

あろうことか、凱はいつの間にか、行動原理が打算的になっていたことに気付き、悔い、恥じるばかりだ。己の過去の罪が思い返されるばかり、勇者としての自分を見失いかけている。
情勢を塗り替える心配よりも、目の前に映るアルサスを救う。もう、迷ってはいけない。
そして、ティッタは体を震わせながら、力の限り叫んだ。

「ガイさん……あたしだって……あたしだって!本当は諦めたくない!」

理不尽な現実があったとしても、感情は納得しないのは、ティッタとて同じだった。
心は強くても、剣さえも持てない、力の弱いティッタは、今の凱と対照的だ。だからこそ、諦めたくないという言葉の重みが、心にのしかかる重みが違う。
強者では決して乗り越えられない、弱者のみが持てる心の強さを、この少女は得ようとしている。

「じゃあ諦めんな!」「でも!」「守ってやる!」「え?」


べらんめぇ口調の凱は、自分でも感情的になっていることに今更ながら気づいた。
お互い感情的になっているから、会話も返事も間を置かない。だが、凱の「守ってやる」はティッタの瞳を開かせた。

「俺が、君達の居場所(アルサス)、も、君のご主人様の帰るべき場所も、全部全部守らせてくれ!!」

「……」

「……正直、三千の兵を退けるのは難しい。ハッキリ言って……勝算があるわけじゃない。でも、君の居場所を守る為なら、俺は何でもする!」

勝算があるわけじゃない、というのは半分嘘かもしれない。
この先、情勢がどう傾くかは分からない。戦いの常識を覆す、丘の黒船のような存在の凱は、少なからずブリューヌに波紋を産むだろう。

「気持ちだけじゃ何も守れない。力だけじゃ何も残らない……
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