ブリューヌ激動編
第2話『勇者対魔物!蘇る銀閃殺法!』
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『アルサス中央都市・セレスタ・ヴォルン家の屋敷』
ティッタの朝は早い。ゆえに、朝一番の早起きが彼女となる。鳥のさえずりがちょうどいい目覚ましとなり、ティッタは起床する。
太陽が昇りかけて、あたりがようやく青白くなってきた頃、昨日のうちに用意していた水で顔を洗い、長い栗色の髪を結んでツインテールにする。それから屋敷中の鎧戸を開けて、外の空気とを入れ替える。
澄み切った空気が鼻孔に入り、ティッタの脳を覚醒させる。今日も一日頑張ります!
決意を改めた勢いのまま、ティッタは慣れた手つきで厨房と食堂を掃除し、いそいで朝食の用意を済ませる。
――みんなの前でお腹が鳴っちまうし……――
――大丈夫です。あたしが責任もってガイさんのお腹を見張りますから――
昨日の昼下がり、そんなやり取りをしてから、ティッタの中には妙な使命感が生まれつつあった。
「シシオウ……ガイさんか……」
日本語表記にして―獅子王凱―というのが、ヴォルン家の居候の名前だった。
どこか濁音の強い響きのあるこの名は、ブリューヌでは珍しい。後名のほうがガイといい、先姓のほうをシシオウという。
みんなには呼びやすいほうの「ガイ」でいいと、人には言っている。愛称も本名も結局はガイとなるので、そう呼ぶしかないのだか――
「あたしがガイさんのお腹の虫さんを見張らなきゃ」
そんなことをつぶやきながら、凱が寝泊まりしている貸部屋の前に立つ。ちいさくひとつ深呼吸して、反応がないのを確認すると、静かに戸を開ける。
ベットから起きたばかりなのか、とてつもなく寝起きの良くない人相で立っていた。
乱れた服の中に手を入れて、胸元をかじっている。虚ろな眼差しが寝起きの悪さを示している。
「ムクリ……おはよう……ティッタ」
凱はこのように、おもむろに声を出して寝起きする。神剣の刀鍛冶であるリサの癖が知らないうちにうつっていたようだ。
なんともしまらない挨拶とともに、ヴォルン家当主に負けないくらいの寝ぼけ顔をみせた。昨日、あのすごい戦いを繰り広げた人物とは思えない。
もともと、このような凱は決して気の緩んだ行動やしぐさをする人間ではない。
時空防衛勇者隊GGG(ガッツィ・ギャレオリア・ガード)に配属されていた頃では、こうしてのんびり朝起きて夜寝るということがほとんどなかった。GGG組織の規則に拘束されていたわけではない。
常に24時間の臨戦態勢にある緊張感と責任感が、人間のごく自然の営みさえも許さなかったのだ。
だが、今の凱は身に降りかかる未曽有の脅威から解放され、こうして質素でありながら、温かみのある居場所を与えられた。
普通に寝起きし、食し、生活するのが楽しくて仕方がない。そのような環境になれば、気が緩むのも止む
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