ブリューヌ激動編
第2話『勇者対魔物!蘇る銀閃殺法!』
[6/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
?それも、黒い弓を家宝としてと言っていた。間違いない。この男は知っている。
ティッタは、枯れそうな喉で懸命に声を絞り出す。
「……さぁ?何のことでしょう?あたしには何のことだか……」
「何ぃ!!」
青年の態度が豹変した。楽から怒の表情へ、鋭い目つきを見る限り、先ほどの態度とは180度違う。
「んん?おかしいなぁ?確かここにあるって聞いたけど?」
わざとらしく考えるふりをして、彼は舌をチョロチョロ出す。やがて舌は尋常ならざる寸法にまで伸びていき、舌の先端で額をかじって人間の仕草を現した。
奇怪な彼のしぐさに、ティッタの背筋は凍り付きそうになった。そのとき、彼の視界に一人の兵士が映る。
「ティッタ、様子は……」「来ちゃだめぇぇ!」「邪魔だよ。君」
つまらなそうな視線で、青年は兵士を見やる。邪魔をされた苛立ちを晴らすかのように、唾を吐きつけた。
青年の唾液をかけられた兵士は、奇声を上げる間もなく蒸発した。
蒸発された兵士は多分、屋敷で待っているティッタの様子を見に来てくれたのだろうか。
長い舌に、溶解性の唾液、人間の範疇を超えている。既にティッタは額に汗をにじませて、さらに青ざめて腰を抜かしている。
「そうかそうか……『弓』はここにはないのかぁ……僕の間違いだったのかな?」
そして青年は顔を仰向けて、芝居がかった口調で言う。
「だめだ!残念すぎて思わず反吐が出るな!!!」
仰々しい物言いに、十分な殺気が感じられる。アルサスに住む、抵抗できない女子供さえも容赦なく殺す気だ。そう思ったとき、ティッタは懸命に声を絞り出す。
「待ってください!弓は確かにここにあります!ですから!!……」
大事なヴォルン家の代々伝わる家宝だが、やむを得ない。力なき侍女には民を守るための、これが精一杯の行動だった。
急いで屋敷に駆け上がり、弓を大事そうに抱えて少女は戻ってくる。それを見ると、青年はさわやかに微笑んだ。
「なんだ。やっぱりあるじゃないか。では確かに」
品定めするかのように、ずっと弓を見やる。使い手が見つかっていないのは残念だが、これだけでも収穫ありと思った。
「ありがとう。だけどね」
刹那、青年はとても大きな麻袋を取り出し、巧みにティッタを袋詰めにする。窒息されては困るので、顔以外を包む格好にした。
口を縄でふさがれ、叫びを上げることすら取り上げられた。、
「んんんぐんんんぐぐんん!!!!」
「君は僕に嘘をついたから、『弓』と一緒に連れていくよ。観客も増えてきたことだし、そろそろ退散といきますか」
そういうと、ヴォジャノーイは自らの影に視線を落とす。すると、袋詰めにされたティッタと彼は眼下の闇に吸い込まれていった。
――ティグル様!!……ガ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ