ブリューヌ激動編
第2話『勇者対魔物!蘇る銀閃殺法!』
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のだ。
―聞こえるか。ヴォジャノーイ―
「ふーん……ここに『銃』と『弓』がいるんだね。ドレガヴァク」
―残念だが、『弓』のほうは使い手が見つかっておらん―
トカゲは、受話者と送受者の意志と言語を仲介し、忙しそうに表情をころころ変える。
「本当に残念だよ。まぁ、『銃』だけでも拝みにいくとしますか」
こんな辺鄙な地に派遣されたから、なんか釈然としない。せめて楽しみがなければ割に合わないというものだ。
―ヴォジャノーイ。『弓』を手に入れる大事な時期だ。あまり事を荒立てぬようにな―
「わかってるよ。ドレガヴァク」
遠隔通話を終えると、ヴォジャノーイは気分をより一層弾ませて、セレスタの町へ向かっていった。
「とはいっても、使い手はともかく、『弓』自体はちゃんと確認しておかないとね。ドレガヴァクによれば、テナルディエの坊ちゃんが軍を率いて、ここへ向かってきているみたいだし……」
ヴォジャノーイは、再びアルサスに向けて足を歩み始めた。
――これから始まる勇者と魔物の宴を待ちわびて――
『アルサス・主要都市セレスタの町・中央広場』
「こっちです!神殿にいれば、襲われることはありません!」
セレスタの町の中央で、ティッタによる必死の呼びかけが行われていた。
足腰の思しくない老人や、郊外へ出ることのままならない、体力のない人々が神殿に入るのを確認する。
避難活動にひと段落付いたティッタは、ヴォルン家に戻ってきていた。
警備兵に神殿への避難を進められたが、彼女は「あたしは屋敷にいます」といって断り続けた。
――赤い髪の当主を真っ先にお迎えしたいから――
もしかしたら、自分がここを離れてしまったら、もう帰ってこないかもしれない。
バートランさんが、必ずティグル様を連れて帰ってきてくれる。
重圧とは異なる不安が、彼女を押しつぶそうとしている。そして、実際にティッタを押しつぶそうとする使者が現れた。
ふと、ティッタは窓を見やる。まだ遠くてよくわからないが、もしかしたら、待ちわびた赤毛の主様が帰ってきたのかも……
今まで閉ざされていた重圧と不安という扉を、不用意に開けてしまった。
「ティグル様!?……あ!」
違う。完全な人違いだ。
見た目は中肉中背の若者。頭にバンダナを巻いて、獣をあしらった服装をまとっている。
後にヴォジャノーイと名乗る若者は、挨拶もなしに用件を言ってきた。
「なあ、ここに『黒い弓』が家宝としてあるってきいたけど、知ってるかい?」
明るい笑みを浮かべて、彼なりに優しく呼びかける。しかし、黒い弓という単語を聞いて、ティッタの顔が緊張で張り詰めている。
どうして、家宝の弓を知っている
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