暁 〜小説投稿サイト〜
魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
ブリューヌ激動編
第2話『勇者対魔物!蘇る銀閃殺法!』
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れだけでなく、凱に傷ついた切り口から、何やら「毒々しい複数色」の紫に変色している!
意識を奪いかねない程の不快な痛覚に耐えかねて、凱は溜まらず膝をついた!

<どうやら毒が回ってきたようだね>

勇者を「毒」という状態異常にさせたことが、魔物を優越感に滴らせる。

「まさに、ブリューヌ昔話に出てくる通りじゃ!そやつの舌は変幻自在!舌の切れ味は、鋼鉄を斬り裂く研ぎ澄まされた刃!」

凱の顔色が青ざめている。血液にしみ込んだ毒の成分が血流を阻害し、確実に凱の体温を奪っていく。
奴の舌から垂れた毒液が眼下の草に垂れる。その毒液は、垂れた草さえも瞬時に溶かす強酸性。もちろん、毒の強さは暗殺者集団「七鎖」が使う毒蛇の比ではない。

「だめだ!あの傷ついた足で、あの魔物の攻撃をかわすことはできん!」

「ワシたちにもどうすることもできないか!」

マスハスは深くかみしめて、バートランは無力ゆえの怒りをぶちまけた。一体どうすればいいのか?自分はここまで無力なのか?
凱のように、素手であのような異形な存在に立ち向かう勇気はない。返り討ちに会うのが実情だ。

<そういや『銃』もさ、なんでこんな女の子を助けるのに一生懸命になるの?>

ヴォジャノーイはドレガヴァクに教わったことがある。人間は利己の為に生きる生物だと。

「……俺より、生きられなかった子供がいた……」

何言ってんだと言わんばかりの表情をするヴォジャノーイ。その異形の顔がしかめ面を作ると、余計不気味さを増す。
それはマスハスもバートランも、一体何を言ってるんだと思っている。

「俺より、生きたかった人達がいた」

東の地にて、阿鼻叫喚の戦争の記憶が蘇る。
蹂躙する人外と悪魔の群れ。泣き叫ぶ平和の時代を生きていた人々。目の前に映る全てを救うと錦を掲げ、人間同士で争った動乱の日々。
あの時、ああしていれば、このとき、こうしていれば、目の前に移るすべてを守れた。守れたはずだった。
だが、それはもはや過ぎたことだ。失われた命は二度と帰ってこない。

「……第二次代理契約戦争(セカンド・ヴァルバニル)で……そんな多くの生命を殺めてしまった俺にとって……ティッタは掛け替えのない……これからの世代を生きる若人」

<わこうど?>

「ティッタは……俺の生命に代えても、無事に取り戻す!」

――ティッタはまだ15の女の子――

――ガイ殿は、新時代の為に、自分の生命を犠牲にしようとしておる――

――小さく、幼い生命が懸命に生き、平和に暮らせる時代を目指そうとしている――

一つ一つ紡がれる凱の言葉は、まるで贖罪の答えを出そうとしているように思えた。

<もういいや。英雄の時代なんてもう終わりだよ。これからはボク達の時代が来るんだ。
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