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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十話 分進合撃
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っとも一番顔色が悪いのは俺だろう。

「それでは敵の動きを詳しく教えてください」
俺の言葉にワルトハイム参謀長が答えた。
「敵の総兵力は三個艦隊、三万隻です。先程お話したように味方の部隊がフレイア星系の制圧に気を取られている間にフレイア星系の外縁をかすめる形で突破、オーディンに向かっています」

俺が頷くとワルトハイムが言葉を続けた。
「このままで行くと敵がオーディンに着くのは四日後というところです。現在メルカッツ副司令長官、クレメンツ提督が後方より敵を追っていますが、両者の間には約二日の距離があります」

「つまり、味方が敵に追付くより敵がオーディンに来るほうが早いと言う事ですか」
「はい、我々は味方の援軍が来るまでの間、二倍の敵を相手にしなければなりません」

なるほど、皆の顔色が悪いはずだ。オーディンを守らねばならない以上、後退戦は難しい、にもかかわらず二倍の敵を相手にしなければならない。相手がシュターデンだとしても力押しで来られたら少々厄介だ。

「参謀長、敵の指揮官は誰です」
「シュターデン大将、そしてラートブルフ男爵、シェッツラー子爵が指揮を取っています。恐らく総指揮はシュターデン大将が取っているのでしょう」

やはりシュターデンか、そしてラートブルフ男爵……、誘拐犯の一味だな。
「閣下、敵は現在艦隊を三方向に分散しオーディンに向けて進撃しています。恐らく迎撃に向かうであろう我等を包囲殲滅するつもりでしょう」

ワルトハイムの言葉に思わず笑い声が出たが痛みで咳き込んでしまった。ヴァレリーが慌てて俺の背中をさする。ようやく呼吸を整え皆の顔を見ると皆ぎょっとしたような表情で俺を見ている。

「直ちに出撃します。準備に取り掛かってください」
「閣下、敵は二倍の戦力です。作戦の一端なりとお教えいただけませんか?」
ワルトハイムが心配そうな表情で問いかけてきた。

「作戦の一端ですか……。敵は二倍じゃありません、せいぜい七割程度の戦力です。それだけですね」
「七割? 閣下、敵は三万の兵力を動かしているのですぞ」

「集まればですね。今はまだ分散しています。各個に撃破すれば良いでしょう」
「……」
「この作戦は時間との勝負になる。急いでください」
「はっ」

席を立ち、幕僚達が準備に取り掛かる。彼らが居なくなるのを待ってからヴァレリーに頼んでリヒテンラーデ侯、エーレンベルク、シュタインホフ両元帥との間に通信を開いてもらった。

「これから出撃します」
「うむ、勝てるかの」
「まあ、何とかなるでしょう」
俺の言葉にリヒテンラーデ侯は顔を顰めた。頼りない言葉だと思ったのかもしれない。

「リヒテンラーデ侯、まあ此処は司令長官を信じましょう」
「軍務尚書の言うとおりです」
「まあ
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