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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
密談
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では、その領の種族に属する者のHPバーは不変になる。逆に言えば、属していない他領のプレイヤーを袋叩きにできるのだ。昨夜、サラマンダーの小隊が領内に踏み込まず、外を飛び回っていたのはそのせいである。
―――当然、必ず負けるようなバンザイアタックをやるつもりやない。必ず他に目的がある。
ALOの仕様上、全面戦争にはなりづらいのは、この一点につきる。
領主が討たれない限り、プレイヤーにはマップ上に必ず絶対の
安全地帯
(
セーフティゾーン
)
が確保されているのだ。だからこそ、領主の安全は絶対なのだが。
その、種族の命運をも握っているともいえる領主のうちの一人は言う。
「……ねぇ、ヒスイちゃん。敵の狙いが、それだけじゃなかったら?全面戦争――――だけじゃなくて、《その先》を見つめて、狙ってたら」
「当然、そうやろなぁ。もっと捻くれた目的があってこその行動やろ」
違う、と端的にアリシャは言った。
「今回、フェンリル隊を押さえたのは、主戦派のことももちろんあるけど、まだ理由があるんだヨ」
「理由、やて?」
そう、と領主は、領主の顔をして頷いた。
「敵がフェンリルを押さえにかかってるんじゃないとしたらどうなると思う?」
「そのまま戦線へ送りこめっちゅーことか?」
しかし、そんなことをして何になるというのだろう。
フェンリルの力は強大だ。ただでさえフィールドMobの中でも最高クラスのステータスを持つ巨獣が実に三十体近く、個ではなく群れで、しかもプレイヤーを乗っけて襲い掛かってくるのだ。正直、下手なイベントボスよりよほど手ごわいだろう。
仮に
地底世界
(
ヨツンヘイム
)
に行く邪神狩りパーティーとブチ当たっても、真正面からブチ抜ける自信がある。
――――と、ヒスイはそこまで考えたところで。
「……まさか」
何かに気が付いたかのように――――否、何かを思い出したかのように顔を強張らせる。
「まさか、《ソレ》が狙いか!?真正面からトカゲどもの精鋭を蹴散らして、フェンリル隊の名声をわざと上げさせる!」
それは昨夜、誰あろうアリシャ当人が口にしていた懸念事項。
フェンリル隊そのものの功績が閾値を超えたために増加し始めた、不平不満。
不平等を叫ぶ彼らプレイヤー達の声は、やがて運営体に届くことになる、と。
そう、と領主は神妙に頷いた。
「奴らの狙いは、一時的な戦国乱世の再来なんて小さなコトじゃない。まだ可能性の域を出ないけど、本格的に
猫妖精
(
ウチ
)
を潰す気なんだヨ」
「――――ッ!」
どすん、とデスクの天板に寄りかかる。
そのままズルズルと床に座り込みながら、ヒスイは掠れた声を絞り出す。
「……もし、そうやったら……キッツいなぁ」、
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