第13話 気づいた本音、残った疑問
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闇。
僕の部屋は月明かりに照らされることなくただ真っ暗で、それはバイト帰りの先の見えない並木道を歩いているような錯覚にさえ陥ってしまいそうな恐怖を与えてくる。
闇。
それはある意味、僕...というか花陽や凛、音ノ木坂に在籍するすべての生徒にとって、存続というのは”生きる”か”死ぬ”かの瀬戸際の案件で、先の見えない真っ暗な世界に半分突っ込んだような気分になる。
でも、僕の部屋には明かりがある。
電気が欲しいときはいつでも電気を入れることができる。パチンとスイッチを入れるとそこに広がるのはいつもの僕の部屋。
部屋で干していた先日の服は綺麗に畳まれていてベッドの上にちんまりと置かれている。「自分で畳むって言ったのに...」と珍しく僕は愚痴る。僕の母親は過保護すぎて困ったものだ。
続いて視線は机に移る。ダークブラウンにカラーリングされた木製の机は僕が中学二年生の時に初めて駄々をこねて母親に買ってもらったのだ。受験の時に机が無いのは困るし、何より居間で勉強すると必ず妹の雫がちょっかいをかけてきて集中できないからだ。
今では傷とか鉛筆の芯の色で薄汚れているけど、それなりに使い続けてきた証だ。
その机の上には一枚の写真が立てかけられている。それを手に取りかぶった誇りを取り払ってほほ笑む。
μ`s
音ノ木坂学院に突如現れた救世主たちだ。
高坂穂乃果、南ことり、園田海未が魅せる初めてのライブは明後日。
彼女たちが希望だ、”光”だ。僕はそう思っている。何かが変わる。そんな予感を僕は感じる。僕ではなく、花陽や凛がきっと変わる。今まで踏み出せなかった一歩を踏み出せると。
───だから、僕は...
─── 第13話 気づいた本音、残った疑問 ───
翌日。
僕は高校が終わった後、花陽と凛を向かいに行くついでに音ノ木坂の外観を少しだけ見ておこうと思って、約束の二十分前に音ノ木坂に来ていた。
長い階段を上ってまず最初に見えるのは左右にそびえる大きな桜の木。これは僕たちがいつも通学路として歩いている道にある桜よりずっと大きい。樹齢は一体...どれくらいなのだろうか。そういうことに全く知識のない僕は、ただただ君臨する桜の木に圧巻されるだけだった。
続いて目先を真ん中に。
そこには赤レンガで建設された校舎がある。よく目を凝らしてみると汚れがついていたり、ひびが入っていたり、はたまた一階には苔のようなものまで生えている...気がする。
でもそんな汚れは”長年の味”だ。風情があっていい校舎だなっと僕は感心した。
それと同時にもうすぐ”廃校”になるかもしれないという現実に何とかしなく
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