外伝
第0話『るろうに戦姫〜独立交易都市浪漫譚』
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【数カ月前・独立交易都市ハウスマン・郊外調査騎士団詰所】
「あああ〜〜やっと西特区郊外偵察の報告書が終わった。えーとそれから、訓練に使った魔剣を清掃して武器庫へ……護送した列衆国の人たちの避難民用の糧食と衣料品を、救護十字騎士団から分けてもらって……
拠点防衛騎士団に仮設住居申請だして……サマーシーズンなのにやること多すぎだろ」
独立交易都市3番街自衛騎士団改め、郊外調査騎士団第3偵察隊隊長の獅子王凱のそんな一言。
日頃の訓練よりデスクワークのほうが労力を要すると唱える獅子王凱は、市長から渡された仕事を淡々と残業をしていた。如何せん、凱のいた世界とは異なり、中世レベルの文明世界では当然パソコンなどありはしない。あれば筆を走らせる仕事などエク○ル、○ード、○ール、大量印刷の複合プリンタで即時終了なのだが……現代人としてこの差を感じるあたりは、交流電圧100Vのない世界でいささか苦労を感じざるを得なかった。
「まあいいや。今日はこれ位にして明日の早朝にやるとするか。飯食って寝るぞ」
即座に明日の行動予定を組み立てて、凱の脳内は仕事OFFモードに移行する。大事な仕事も山積みなのは事実だが、明日も明後日も続くので、体がつぶれては元も子もない。しっかり休むことも任務の一つだと割り切るのだった。ここで大きくあくびを一つ。
筆などの小道具を引き出しに戻そうとして、取手部の金具に手を掛けた時、唐突な違和感を察した。
木製の引き出しがカタカタと震えている。まるで、小動物が引き出しの内部で暴れているかのようだ。
<エザンディスの調子がおかしい?何か引っかかりを感じますが……>
不気味だ。引き出しの中からぶつぶつ声が聞こえる。きっと残業が齎した疲れのせいだと決めつける。
<どうしてこんなところに出口がひらいたのでしょうか?緑色の不思議な波動に導かれて……>
などと聞こえてくる。
「どうしてだって?そんなの俺が聞きたいぜ」
ハタから見れば単なるひとりごとに見える。ゴクリと固いつばを呑む。冷や汗が1滴だけ頬を伝う。
「おいおい、まさか人が入ってるんじゃないだろうな」
居残り青年は、恐る恐る引き出しの取手に手を掛けようとする。
「なんだ!?引き出しの隙間から、急に光が!!」
濃い紫の光が、薄暗い事務室の天井を照らし出す。
何かが、起きようとしている。引き出しがひとりでに勝手に開く。
一人の可憐な女性が、某タイムマシンの如く凱の机の引き出しからひょっこり頭を突き出してきた。
「あら、ここはどこでしょうか?」
がたんと椅子から転がり落ちた凱。口をパクパクさせながら目の前の女性に指をさす。
「ななななななんだ!?俺の机の引出からいきなり出てきやがって!ド○○○○か
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