ブリューヌ激動編
第1話『流浪の勇者〜彼は愛故に戦えり』
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『ブリューヌ・アルサス中心都市セレスタ・中央広場』
朝霧の残る静かな時間において、少女はセレスタの街中を走り抜けていく。
「はあ……はあ……はあ」
荒い息を上げながら、それでも齢15となる女の子は、一人の影を必ず捕まえなければならなかった。
影の行方が正しければ、こっちのはず。
そう少女は予感を直感に変えて、特徴のある影の糸をたぐっていく。
「……見つけたわ」
怒気を孕んだ声色で、ティッタは輪郭のある影を見上げた。もやがある為に色彩を捕えることが出来ないが、間違いないと確信させる。
ティッタは知っていた。だから躊躇はしない。右手に携えた果物ナイフが影に狙いを定める。
かすかな声と怒りの視線に、獅子王凱は後ろを振り向いた。
「ん?誰だ?」
頬を撫でるような風の声。
頬を暖めてくれるような優しい声。
心奪われるような愛に満ちた声色で、凱はティッタと向き合った。
「やっと見つけたわ!そのお金を返しなさい!」
凱は目玉を見開いた。
「……なんだ?」
覚えのない出来事は、唐突に訪れた。ツインテールの少女に光り物を向けられているこの状況はいかに?
「やあああああ!!!!」
直線してくる鋭利な刃物を、長髪の青年はひらりと上空へ交わした。その跳躍力は人間を超越している。
ツインテールの頭を過ぎる宙返りの形で、彼女の後ろに立つと優しく肩をポンと叩いた。
「何か勘違いしているみたいだけど、お金なんて……二束三文しかないぜ」
身なりが若干貧相な青年は、ゆったりと答えた。
財布の中身を確認したティッタは、自分が勘違いをしたと取り乱し、慌てて謝る。
「す!すみません!あたしったら野盗の連中だとてっきり思って!」
「野盗?この町に野盗が襲ってきたのか?」
顔をうつむせて、ティッタはこくりとうなずいた。すなわち、肯定。
「あなたの姿を見た時、その左腕のところが……身代金で用意した金貨に見えたものでつい……」
申し訳なさそうな口調のティッタは、凱の左腕を指さした。
獅子を模した勇者の篭手を。
(金……ガオーブレスの事か)
「とにかくすみません!あたし、急いでますのでお詫びは……」
また今度必ず。そう告げようとしたとき、別の方角から騒ぎを駈けつける悲鳴が浮かんだ。
その反応に鋭い切り返しを示したのは、ティッタだった。
「今度こそ見つけたわ!絶対に逃がさないんだから!」
「お……おい!ちょっと待て!」
凱の静止を聞かず、またもやティッタはセレスタの街中を駆けていった。
――――ティッタが追いかけていっ
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