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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
決死の脱出
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、穴の入り口を振り(あお)ぐ。

まさにその瞬間__。

遥か高みの、丸く切り取られた白い光の中に、滲むように黒い影が生まれた。それはみるみるうちに大きくなる。2枚の翼、長い尾、鉤爪を備えた四肢までがすぐに見て取れるようになる。

「き……き……」

リズベットは(そろ)って後ずさった。でももちろん、どこにも逃げ道があるはずもない。

「来たーーーーーっ!!」

二重に叫びながら3人がそろぞれの武器を抜いた。

縦穴を急降下してきた白竜は、リズ達の姿を認めると一声甲高く鳴いて地表すれすれに停止した。縦長の瞳孔を持つ赤い眼には、巣への侵入者に対する明らかな敵意が浮かんでいる。しかし狭い穴底のどこにも隠れる場所はない。緊張を押し殺しながらもリズベットはメイスを構える。

同じく片手剣を構えたキリトが、リズベットの前に出て早口で言った。

「いいか、俺の後ろから出るなよ。ちょっとHPが減ったらすぐにポーションを飲んどけ」

「う、うん……」

今度ばかりは素直に頷く。

ドラゴンが口を大きく開け、再び雄叫びを上げた。翼の巻き起こす風圧で雪が舞い上がる。長い尻尾が地面をびたんびたんと叩き、その(たび)に雪面に深い(みぞ)穿(うが)たれる。

先制あるのみ、とばかり右手に逆手持ちで構えた剣を振りかぶり、突進しようとしたがネザーだが__なぜか突然その動きを止めた。

「……待てよ……これはチャンスかもしれない」

低い声で漏らす。

「ど、どうしたの?」

リズベットの問いには答えず、振り向いてキリトに傍に寄り、耳元でパクパクと口を動かし何かを伝えた。

「なるほど。名案だ」

ネザーの話を納得したキリトは剣を(さや)に戻し、振り向いてリズベットの体を左手でぐっと抱き寄せた。

「えっ!?」

訳がわからずパニクるリズベットは、そのままひょいとキリトの肩に(かつ)ぎ上げられた。

「ちょ、ちょっと、何を__うわっ!!」

ずばん!という衝撃音と共に、周囲の風景が(かす)んだ。ネザーとキリトが猛烈な勢いでそれぞれ同じ側の壁に向かってダッシュしたのだ。激突の寸前で大きく跳び上がると、昨日キリトが脱出を試みた時にやってみせたように、湾曲(わんきょく)する壁面を走り始める。しかし2人とも登る気はないようで、軌道は水平のままだ。ドラゴンの首がぐうっと曲がって3人をタゲり続けるが、その追随(ついずい)を上回るスピードでネザーとキリトは壁走りを続ける。

数秒後、ようやくキリトが穴底に着地した時、リズベットはすっかり眼を回してしまっていた。何度も(まばた)きを繰り返してから見開いた眼の先に、ドラゴンの後姿があった。自分を含む3人を見失って、首をキョロキョロ左右に振っている
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