暁 〜小説投稿サイト〜
Sword Art Rider-Awakening Clock Up
決死の脱出
[6/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
さを、もっと直接、心の触れる距離で確かめたくなった。

無意識のうちに、唇から短い言葉がこぼれ落ちていた。

「ね……手、握って」

体を左に向け、ベッドロールから自分の右手を出して、隣に差し伸ばす。

キリトはわずかに黒い瞳を見張ったが、やがて小声で「うん」と答え、おずおずと左手を差し出してきた。指先が触れ、2人ともピクッと引っ込めてから、再び絡め合う。

思い切ってギュッと強く握ったキリトの手は、さっき飲んだスープのカップよりもずっと温かかった。手の下側は氷の地面に触れているのに、その冷気をリズベットは全然意識しなかった。

人間の温かさだ、と思った。

この世界に来てから、常にリズベットは心の一部に居座り続けていた渇きの正体が、今ようやく解ったような気がしていた。

ここが仮想世界であること、あたしの本当の体はどこか遠い場所に置き去りで、いくら手を伸ばしても届かない、そのことを意識するのが怖くて、次々に目標を作っては遮二無二(しゃにむに)作業に没頭してきた。鍛冶の技を磨き、店を大きくして、これがあたしのリアルなんだと自分に言い聞かせてきた。

でも、あたしは心の底で、ずっと思っていた。全部偽物だ、単なるデータだ、と。餓えてたのだ。本当の、人の温もりに。

もちろん、キリトの体だってデータの構造物だ。今あたしを包んでいる温かさも、電子信号があたしの脳に温感を錯覚させているに過ぎない。

けれど、ようやく気づいた。そんなことは問題じゃない。心で感じること。現実世界でもこの仮想世界でも、それだけが唯一の真実なんだ。

しっかり手を繋いだまま、リズベットは微笑み、キリトも微笑み返して瞼を閉じ、眠りについた。











瞼を開き、最初に眼に映った光景は__。

身体が鋭い激痛に支配され、口内に血が滲んでいる。

「う……」

(うめ)きながらも、這い(つくば)る姿勢で倒れた身体を起こそうとする。

やがて上体を起こし、続いて立ち上がり、よろけそうな上半身を2本足で支える。

首を左右に回しながら周囲を確認するが、何も見えない。地面や壁もなく、空も見えない暗黒の空間。全てが暗闇に閉ざされ、見えるのは血塗れになった自分の身体だけ。

……痛い!!この身体……どうなってるんだ!?

自分はついさっきまで、キリトとリズベットの2人と共にベットロールに潜り眠っていたはず。それがどういうわけか、自分の全身が傷だらけでボロボロな状態。立ち尽くすのもやっとだった。

……ここはどこだ!?

珍しくパニックに近い状態に陥り、行き先も見えないまま一歩ずつ前に踏み出してみた。

「……ド……イド……スレイド……」

不意に、背後で小さな声が聞こえ、俺は肩
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ