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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
リズベット武具店
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第48層主街区《リンダース》。

そこは、巨大な水車が緩やかに回転する心地よい音が、ある工房を満たす。さして広くもない職人クラス用プレイヤーホームだが、水車のおかげでやたらと売値が高かった。

しかし、外見を見た瞬間、彼女は見惚れた。一目で「ここしかない!」と思ったのだ。

目標の額が300万コルだと知った時、彼女は愕然とした。それからというもの、彼女は死に物狂いで働き、各方面に借金までして、目標の300万コルに2ヶ月で到達することができた。

そして、この水車つきの家は晴れて《リズベット武具店》となったのだ。





水車のごとんごとんという振動音をBGMに、(あわ)ただしく朝のコーヒーを飲んだ後、《リズベット》は鍛冶屋としてのユニフォームに着替え、壁の大きな姿見(すがたみ)でざっと検分した。

鍛冶屋と言っても、作業服のようなものではなく、どちらかと言えばウェイトレスに近い。()(わだ)色のパフスリーブの上着に、同色のフレアスカート。その上から純白のエプロン、胸元には赤いリボン。

この服装をコーディネートしたのはリズベットではなく、友人でお得意様でもある同年代の女の子だ。彼女曰く「リズベットは童顔(どうがん)だからごつい服は似合わないよ!」ということで、最初は大きなお世話だと思ったが、確かにこのユニフォームに替えてから店の売り上げは倍増し、いささか不本意ではあったものの、以来ずっとこれで通している。

彼女のアドバイスは服だけに留まらず、髪型もことあるごとに(いじ)られて、今はベビーピンクのふわふわしたショートヘアという驚異的なカスタマイズを施されている。しかし周囲の反応を見るにどうやらこれもまんざら似合ってないというわけでもないらしい。

鍛冶屋リズベットは、SAOにログインした時は15歳だった。現実世界でも歳より幼く見られがちだったが、この世界に来てからその傾向はいっそう強くなってしまった。鏡に映る自分は、ピンクの髪にダークブルーの大きな瞳、小作りな鼻と口が古風なエプロンドレスとあいまってどこか人形じみた雰囲気を(かも)し出している。

向こうではお洒落に興味のない真面目な中学生だっただけに、ギャップを感じないではいられない。最近ではどうにかこの外見にも慣れてきたものの、性格だけは直せず、時折(ときおり)お客を怒鳴りつけてしまってはギョッとした顔をされることもしばしばだ。





装備のし忘れがないことを確認すると、リズベットは店先に出て、CLOSEDの木礼を裏返した。開店を待っていた数人のプレイヤーに最大級の笑顔を向け、「おはようございます、いらっしゃいませ!」と元気よく挨拶する。これが自然にできるようになったのも実はけっこう最近のことだ。

お店を経営したい、という
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