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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
リズベット武具店
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らその辺の水晶の陰に隠れるんだ。絶対顔を出すなよ」

「……何よ、あたしだってそこそこレベル高いんだから、手伝うわよ」

「ダメだ!」

キリトの黒い瞳が、まっすぐリズベットの眼を()た。その途端、キリトは真剣にリズベットの身を案じているのだ、ということがわかって息を詰めて立ち尽くしてしまった。何も言い返せず、再びこくりと頷く。

キリトはニッと笑うとリズベットの頭にポンと手を置き、「じゃあ、行こうか」と言った。リズベットはもうコクコクと頭を振ることしかできなかった。

なんだが、突然空気の色まで変わってしまったような気がした。

キリトと2人でここまで来たのは、ちょっとした気分転換というか、その場の勢いというか……生死のかかった戦いだなんて意識はまったくなかった。

元々リズベットは、レベルアップのための経験値の半分以上は武具制作で得たのであって、本当にシビアな戦場には出たことがない。

だが、この人は違う。そう思った。日常的にギリギリの場所で戦っている人間の眼だった。

混乱した気持ちを抱えたまましばらく歩くと、すぐに山頂の中央に到達した。

ざっと見回したところ、ドラゴンの姿はまだないようだった。しかしその代わり、水晶柱にグルリと取り囲まれた空間には……

「うわあ……」

ぽっかりと、巨大な穴が開いていた。直径は10メートルもあるだろうか。壁面は氷に覆われてツルツルと輝き、垂直にどこまでも深く伸びている。奥は闇に覆われてまるで見えない。

「こりゃあ深いな……」

キリトがつま先で小さな水晶の欠片を蹴飛ばした。穴に落下したそれは、キラリと光ってすぐに見えなくなり、そのまま何の音も返してこなかった。

「……落ちるなよ」

「落ちないわよ!」

唇を尖らせて言い返した、その直後。

最後の残照で藍色(あいいろ)に染め上げられた空気を切り裂いて、今度は猛禽(もうきん)を思わせる高い雄叫びが氷の山頂に響き渡った。

「まずい!リズ、その陰に入れ!!」

突然キリトが有無を言わせぬ口調で、手近の大きな水晶柱を指した。リズベットは目の前の事態など忘れ、慌てて従いながらキリトの背中に向かってまくし立てた。

「ええと、ドラゴンの攻撃パターンは、左右の鉤爪(かぎづめ)と、氷ブレスと、突風攻撃だって!……き、気をつけてね!」

最後の部分を早口で付け加えると、キリトは眼を後ろに向けたまま気障(きざ)な仕草で親指を立てた左拳を振った。ほとんど同時にその前方に空間が揺らぎ、(にじ)み出すように巨大なオブジェクトの湧出(ポップ)が始まった。

ディティールの狙いポリゴンの塊は、立て続けにごつごつと出現する。それらは次々と接合しては、面を削ぎ落とすように情報量を増していき、やが
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