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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
リズベット武具店
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呟いてから頭をぶんぶん振って妙な思考を払い落とし、リズベットは立ち上がった。炉から真っ赤に焼けたインゴットを取り出し、再び金床の上に置いた。当分はこいつが恋人だなぁ、などと考えながらハンマーを持ち上げ、振り下ろす。

工房に響くリズミカルな(つち)(おと)は、いつもならリズベットの頭をすぐに空っぽにしてくれるのに、今日に限ってはもやもや感が去ろうとしなかった。





「あの、キミ、悪いんだけど……」

「んん……」

声と共に体を揺さぶられ、リズべットの意識は眠りの底から浮上する。

ハッとして瞼を開くと、目の前に男の顔があった。

「はっ、はいっ、ごめんなさい!!」

「うわ!?」

バネ仕掛けのようにびよーんと立ち上がり、大声で叫んだリズベットの前に、唖然とした顔で直通している男性プレイヤーがいた。

「あれ……?」

リズベットはぼんやりと周囲を見渡す。ふんだんに配された街路樹、広い石畳の道を取り囲む水路、芝生の庭。第48層主街区《リンダース》の街だ。

どうやら久々に思い切り寝惚けてしまったらしい。咳払いで気恥ずかしさを押し返すと、客とおぼしき男に挨拶を返す。

「い、いらっしゃいませ。武器をお探しですか?」

「あ、う、うん」

男はこくこくと頷いた。

一見したところ、それほどの高レベルプレイヤーには見えなかった。歳はリズベットより少し上だろうか。黒い髪に、同じく黒い簡素なシャツとズボン、ブーツ。武装は背中の片手剣1つきりだ。リズベットの店の品揃えは、要求ステータスの高い武器がほとんどなので男のレベルが足りるか正直心配になったが、顔には出さずに店内に案内する。

「片手剣はこちらの棚ですね」

既製(きせい)武器の見本が陳列(ちんれつ)されたケースを示すと、男は困ったように微笑みながら言った。

「あ、えっと、オーダーメイドを頼みたいんだけど……」

リズベットはいよいよ心配になる。特殊素材を用いたオーダー武器の相場は最低でも10万コルを超える。代金を提示してからお客が赤くなったり青くなったりするのはこちらとしても気まずいので、何とかそんな事態を回避しようとした。

「今ちょっと、金属の相場が上がってまして、多少お高くなってしまうかと思うんですが……」

と言ってみたものの、黒衣の男は涼しい顔でとんでもないことを言い返してきた。

「予算は気にしなくていいから、今作れる最高の剣を作ってほしいんだ」

「………」

リズベットはしばし呆然と男の顔を眺めたが、やがてどうにか口を開いた。

「……と言われても……具体的にプロパティの目標値とかを出してもらわないと……」

つい口調が多少ぞんざいになったものの、男は気にすることもなく頷
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