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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
幻想の復讐
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しかし、さすがに俺も空腹を覚え、思わず胃を押さえた。同時に、隣に座るキリトも腹に手を当てた。

すると、アスナがウィンドウを開き、白い紙に包まれたものを3つ実体化させ、俺とキリトの前にいきなりズイッと突き出した。視線を酒場に向けたままそれを保持するアスナが、短く「ほら」と言った。これが何なのかは(にお)いで理解できたが、キリトが反射的に確認してしまう。

「……く、くれるの?」

「この状況でそれ以外何があるのよ。見せびらかしてとでも?」

「い、いや、すいません。じゃあ有り難く」

「………」

キリトは首を縮めて素早く紙包みを受け取り、俺は無言のままゆっくりと受け取った。

キリトがチラッと視線を振ると、俺とアスナは監視を続けたまま、いそいそと包み紙を剥がした。その光景につられるようにキリトも包み紙を剥がしていく。中から出てきたのは、大ぶりのバゲットサンドだった。カリッと焼けたパンの間に、野菜やロースト肉がたっぷり挟まれたそれをボケーッと眺めてると、アスナが冷静な声で言った。

「そろそろ耐久値が切れて消滅しちゃうから、急いで食べたほうがいいわよ」

「えっ、はっ、はい、頂きます!」

「……頂こう」

3人は口を開けて(かぶ)り付き、バゲットサンドの重層的歯ごたえにしばし浸った。

「……美味いな、これ」

「……美味い」

この味には、さすがの俺も言葉を発せざるを得ない。

味付けはシンプルながら適度に刺激的で、次々頬張ってしまいそうだ。食べ物の耐久度は味には影響しないので、存在している限りは出来立てと何ら変わらない。

視線を酒場の入り口に固定しながらも、大型のバゲットサンドを一気に(むさぼ)り尽くし、キリトはフゥーと満足のため、ため息をついた。隣でまだ上品に口を動かしているアスナと俺をチラッと見やり、アスナに礼を言いがてら訊ねる。

「それにしても、いつの間に弁当なんか仕入れたんだ?通りすがりの屋台じゃ、こんな立派な料理売ってなかったよな?」

「耐久値がもう切れるって言ったでしょ?こういうこともあるかと思って、朝から用意しといたの」

「へぇ……さすが《血盟騎士団》攻略担当責任者様だな。……ちなみに、どこの店の?」

カリッと焼けたパンに野菜とロースト肉を挟んだバゲットサンドはキリト的名店リストのかなり上位に食い込む味だったので、しばらくはこれを攻略のお供にしようと思い、キリトは更に質問した。しかしアスナは小さく肩を(すく)め、予想外の答えを返した。

「売ってない」

「へ?」

「お店のじゃない」

なぜかそこで押し黙り、それ以上何も言いそうにないので、キリトはしばらく首を捻った挙句にようやく悟った。NPCショップにて(あがな)
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