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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
幻想の復讐
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し、初対面の相手のカーソルにはHPバーとギルドタグしか表示されず、名前やレベルまではわからない。
これは、様々な犯罪行為を防ぐための当然の仕様だと言える。他人に名前を一方的に知られると、インスタント・メッセージを悪用した《嫌がらせ(ハラスメント)》を受ける可能性があるし、また他人のレベルが簡単にわかれば、街で低レベルの獲物を
見繕
(
みつくろ
)
って尾行しフィールドで襲うといった強盗・恐喝が格段にやり
易
(
やす
)
くなってしまう。
だが、他人の名前が見えないというその仕様ゆえに、今回のように人を探そうとすると少なからぬ苦労を強いられる。
初対面の誰かの名前を知ろうとするなら、方法は俺の知る限りたった1つ。1対1の決闘、すなわちデュエルを申請するしかない。もちろん、それ以外の方法が1つもないわけではないが、それを実行するとなると現実に帰還しなければならない。SAOがデスゲーム化しなければ……、と悔しく思えて仕方がない。
SAO開発に
携
(
たずさ
)
わった俺に言わせれば、晶彦の持つ管理者権限をハッキングして奪う、なんてことも可能だが、それも現実に帰還しなければ無理な話だ。
無駄な思考を捨て、メニューウィンドウからデュエルボタンを押し、選択モードになった指先で対象のカラー・カーソルを指定すると、俺の視線には【誰それに1VS1デュエルを申請しました】というシステムメッセージが表示される。それを見れば、相手の名前が正式なアルファベット版でわかるわけだ。
しかし同時に、相手の視界にも俺からデュエルを申し込まれた
旨
(
むね
)
のメッセージが表示される。ゆえに身を隠したまま名前だけ調べることはできないし、それ以前に完全なるノーマナー行為でもあるし、更には相手がデュエルを受けて立ち武器を抜くという展開すらあり得る。
俺の行為に、アスナは何かを……《危険》という意味のことを言おうと口を開きかけた。
キリトと違って、アスナは俺のやり方に賛同できていないのだろう。
しかしすぐに唇を引き結び、厳しい表情で頷く。他には方法がないことを理解してくれたのだろうが、続けて発せられた言葉は__。
「でも、グリムロックさんと話す時は、わたしも一緒だからね」
そうきっぱりと宣言されてしまえば、部屋で待っててくれという言葉は呑み込むしかない。
だが特に否定する理由もなく俺は頷き、キリトは少々ためらいつつも頷いた。
時刻を確認すると、午後6時40分。そろそろ各層の街が晩飯を食いにきたプレイヤーで賑わう頃合いだ。問題の酒場も、地味な店構えのわりにはスイングドアが
頻繁
(
ひんぱん
)
に揺れている。しかしまだ、瞼の裏に焼き付いたあのフーデッドローブに合致するプレイヤーは現れない。
だが俺達にはもう、最後の手がかりであるこの店に賭けるしかなかった。
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