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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
瞬殺
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アスナがメッセージを飛ばした30分後、本当にその男が現れたのに、少々驚いた。

アルゲード中央の転移門から進み出た身長の姿を見た途端、広場を生き交う多数のプレイヤー達が激しくざわめいた。暗赤色のローブの背にホワイトブロンドの長髪を束ねて流し、腰にも背中にも一切の武器を持たない。SAOには存在しない《魔導士》クラスとすら思える雰囲気をまとう男。ギルド《血盟騎士団》リーダーにしてアインクラッド最強の剣士、《神聖剣》ヒースクリフは、3人を見るとピクリと片方の眉を持ち上げ、滑るように近づいてきた。

アスナがビシッと音がしそうな動作で敬礼(けいれい)し、急ぎ込むように弁解した。

「突然のお呼び立て、申し訳ありません団長!この者がどうしても呼べと言うものですから……」

どうしても、とは言ってない。そう脳裏で呟いたが、口に出すことはなかった。

「何、ちょうど昼食にしようと思ってたところだ。かの有名な《黒の剣士》キリト君に、《神速》と恐れられたネザー君とご馳走を共にする機会など、そうそうあるとも思えないしな。夕方からは装備部との打ち合わせが入っているが、それまでなら付き合える」

滑らか、かつ鋼のように引き締まったテノールでそう言うヒースクリフの顔を見上げ、俺は肩を竦めた。

「俺もできればあんたを呼び出したくなかったが、仕方ないんでね。興味深い話を聞かせてやる」

ご馳走と言っても、店を選ぶのはキリトの役目であるため、少々不安だった。

最強ギルドKoBのナンバー1と2を案内したのは、キリトの知る限りアルゲードもっとも胡散臭い、謎のNPC飯屋だった。しかしその店を見て、俺は不思議と不安を感じなかった。決して味が気に入ってるわけではないが、(かも)し出す総体としての雰囲気、そして何より人数があまりに少ないのが、俺の琴線(きんせん)に触れた。

キリトの後に続き、迷宮のような隘路(あいろ)を、5分ほども右に折れ下に潜り左に回って上に登りした先に、ようやく現れた薄暗い店を眺めてアスナが言った。

「……キリト君……帰りもちゃんと道案内してよね。わたしもう広場まで戻れないよ」

「噂じゃあこの街には、道に迷ったあげく転移結晶も持ってなくて、延々(えんえん)さまよってるプレイヤーが何十人もいるらしいぞ」

キリトが薄く微笑みながらそう脅かすと、俺が何事でもないように注釈(ちゅうしゃく)を加えた。

道端(みちばた)でNPCに頼めば、10コルで広場まで案内してくれる。その金額を持ってない場合は……言わなくてもわかるな」

両方の掌をヒョイッと持ち上げ、スタスタ店に入っていく。

狭い店内は、予想通りまったくの無人だった。安っぽい4人がけテーブルに座り、陰気なNPC店主に《アルゲードそば》4人前を注文してから、
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