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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
瞬殺
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ぱしゃっ、という、あまりにもささやかな破砕音(はさいおん)。ポリゴンの欠片が、炸裂したブルーのの光に吹き散らされるるようにして拡散し……

1秒後、乾いた音を立てて、漆黒のダガーだけが路上に転がった。

そんな!!

俺の脳内に響いた無音の絶叫には、何重もの意味が存在した。

宿屋の客室はシステム的に保護されているのだ。例え窓が開いていようとも、その内部に侵入することはもちろん、何かを投げ込むことも絶対に不可能だ。

更に、あんな小型のスローイングダガーが、中層レベルプレイヤーのHPを全て吹き飛ばすほどの貫通継続ダメージを発生させたことも信じがたい。ダガーが刺さってからヨルコが落下・消滅するまで、どう長く見積(みつ)もっても5秒と経過していなかったのだ。

絶対にあり得ない。これはもう、《圏内PK》などという呼び方では収まらない。

息が詰まり、背筋に極低温の戦慄が駆け巡るのを感じながら、俺はヨルコの消えた石畳から無理矢理に視線を外した。勢いよく顔を上げ、見開いた両眼で、外の街並みをカメラのように切り取る。

そして、それを見た。

宿屋から2ブロックほども離れた、同じ高さの建物の屋根。

深い紫色の残照を背景に、ひっそりと立つ黒衣の人影。

漆黒のフーデッドローブに包まれ、顔は見えなかった。脳裏に閃いた《死神(ヴァーミン)》という単語を押しのけ、俺は叫んだ。

「あいつッ……!!」

窓枠に左右を掛け、背後を見ずにもう一声、

「アスナ、キリト、そこにいろ!!」

叫び、通りを(へだ)てた向かいの建物の屋根へと一気に跳んだ。

しかし、いかに敏捷力(びんしょうりょく)補正があるとは言え、道幅(みちはば)5メートルを助走なしに飛び越えようとしたのはやや無謀だったが、屋根と屋根の間を飛び越えることなど、現実世界で何度も体験したことだ。スキルがあろうがなかろうが、俺には関係なかった。

屋根上に着地すると同時に、後ろからアスナの切迫(せっぱく)した声が届いた。

「ネザーさん、だめよ!」

静止の理由は明白だった。もしあのスローイングダガーによる攻撃を被弾すれば、俺も即死するかもしれないからだ。

だが、今更自分の命を惜しむことなどなかった。もしここで死ぬのが俺の運命なら、喜んで受け入れる所存だ。

俺の思考を(あざ)(わら)うかのように、彼方の屋根上で、黒い腰ローブが風に大きくなびいた。

「逃がすかよ……!!」

叫び、俺は猛然と走り始めた。同時に後ろ腰の剣を引き抜く。街中ゆえに俺の剣ではやつにダメージを与えられるかはわからないが、投げられたダガーを弾くことぐらいはできるはずだ。

ダッシュの勢いを殺さぬよう、屋根から屋根へといとも簡単に飛び移っていく。眼下
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