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色を無くしたこの世界で
第一章 ハジマリ
第10話 VSジャッジメント――試合開始
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 シュートはアステリの制止の甲斐なく、そのままの勢いでゴールへと突き進む。
ゴールキーパー、マッチョスは大きく息を吸い込み、胸を張りシュートを受け止める。だが…

「ぐわぁっ!!」

 デュプリ……しかも目で見て分かる程力の差があるシュートを止める事は出来ず、シュートはマッチョスの身体ごと、ゴールへと突き刺さる。
 瞬間、スタジアム内に甲高い笛の音が鳴り響いた。

『ゴォォォォォルッ!! カオス選手の必殺技《インフェルノ》が見事、テンマーズのゴールを揺らしたぁぁ!』

 興奮した様子のアルの声がスピーカーから聞こえてくる。
 天馬は慌てて、先ほど落下したアステリの傍に駆け寄る。
 傍まで行くと、彼は苦しそうな表情で蹲っていた。

「アステリ、大丈夫か?!」
「天馬……。ごめん……シュート、止められなかった……」

 そう弱弱しい声で呟くアステリに、「アステリのせいじゃないよ」と励ましの言葉をかける。
 天馬の言葉を聞いたアステリは俯いていた顔を上げ、彼を見る。

「点を取られたなら取り返せばいいんだ! 時間はある。まだまだこれからだよ」
「……うん……そうだね」
「それより怪我は無い? 凄い高さから叩き落とされてたけど……」

 天馬の問いに頷くとアステリは「ありがとう」と微笑んだ。
 アステリの答えにホッと胸を撫で下ろす。と、突然目の前が薄暗くなる。
 何かと思い上を向くと、笑みを浮かべたカオスが二人を覗き込んでいた。

「! カオス!」

 天馬達を見下げるカオスに、アステリは噛み付く様な視線でそう叫んだ。
 それを見てカオスはクスクスと楽しそうに笑う。

「どう? 僕のシュートは。君も無茶な事するんだね。技も使わず僕のシュートを止めようとするなんて」

 「あぁそれとも使えないのかな」と憎たらしい態度で続ける。
 その態度にアステリ、それに天馬も、睨み付ける力を強くする。

「試合はまだまだこれから。ま、せいぜい楽しませてよね。裏切り君」

 そう笑うとカオスは自分のポジションに戻っていった。

「気にしない方が良いよ」
「! フェイ……」

 カオスが去ってすぐ、後ろからフェイの声が聞こえ、二人は振り返る。

「聞いてたのか……」
「うん。言いたい奴には言わせておけば良いよ。ボク等はボク等のサッカーをすれば良いんだから」

 フェイの言葉に「そうだね」と頷くと、天馬は自らのポジションに向けて歩きだした。
 ふとスタジアム内に設置されたスコアボードを見る。
 そこには0-1の文字。
 その数字を見ると、トゲの様な鋭い痛みがズキリと天馬の胸を襲う。

――……アステリには「大丈夫だ」なんて言ったけれども、さっきのゴールはハッキリ言って俺のせいだ。
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