第一章 鉄仮面の彦星
番外編 アウラの門出
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ひめ、さま……な、なにを……!」
「――アルク。知っているでしょう? かつて私達のふるさとは、タルタロス星人の侵略により滅亡させられていた、と」
「……!」
彼女の口から語られたエリュシオン星史の一端に、アルクは目を剥く。
――現在あるエリュシオン星は、正確にはエリュシオン星人の母星ではない。遥か昔、タルタロス星人と呼ばれる侵略者の襲撃を受け、故郷を失い他の星に逃れた唯一の生き残りが、他の宇宙難民を率いて新天地に築いた新たな国家。それが現「エリュシオン星」なのだ。
現体制を築き上げた、その生き残りの血を引くアウラは――知っているのだ。現エリュシオン星の王である父を救ってくれた、恩人達が住まう星の名を。
「お父様は……改造人間という身でありながら人類の未来のために戦い、異星人である自分さえ救ってくださった、偉大な七人の勇者のお話を、いつも聞かせてくださった。だから私は――恩返しがしたいの。父を、エリュシオンの未来を救ってくださった、あの青い星に」
「ひ、姫様……!」
「今、地球の人々は『シェード』と呼ばれる悪の組織により、改造人間にされつつあるわ。人でありながら、人でない……そんな苦しみに苛まれている人々を見捨てることなんて、私には絶対にできない」
「そ、それならば我々が……! なにも姫様が行かずとも……!」
「戦うことだけが、宇宙刑事としての私の任務ではないのよ、アルク。改造人間にされた人を、生身に戻せる秘術はエリュシオン星人の血を引く私にしかできない。――だから私が、今回の地球派遣の任務に選ばれたの」
「で、ではせめて我々を護衛に! そのような危険な状況にある星へ、姫様を一人で行かせるなど断じて――!」
「……その私にいいようにあしらわれてるあなた達が来たところで、足手まといにしかならないわ。今の投げも読めないくらいに衰えてるあなたが、未だに騎士団長を退いていないのは――あなたより強い後任が育っていない証拠でしょう?」
「ぬぐぅう……!」
懸命に食い下がり、忠誠を捧げる姫君を一人で行かせまいとするアルクだったが……どのように言葉を並べても、彼女を引き留めることは出来ずにいた。そんな老騎士の姿を見下ろし、アウラは苦笑いを浮かべる。
「……ごめんね、心配かけて。でも、大丈夫。一人でもやっていけるようになるために、宇宙刑事過程を履修したんだから。すぐに任務を終わらせて、大手を振って帰ってくるわ」
「……! ひ、姫様! お待ちください姫様! 姫様ぁあぁあ!」
せめて不安な気持ちは見せないように。彼女は老騎士に笑い掛け――ドックに続く扉を開く。そして、自分に向け手を伸ばす老騎士を見つめ、悪戯っぽい笑みを浮かべるのだった。
「――じゃ、行ってきます」
ドックに続く扉が自動で閉じられたのは、そ
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