第一章 鉄仮面の彦星
第11話 紅き一蹴、紅き一閃
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の表情は再び暗く沈んでしまった。
「彼らは俺を化け物と非難し、恩も忘れて迫害したのだ。俺の人としての心は、その日から失われた」
「……」
「脆いものさ。人間の、正義感なんてな。……仮に今から、あの娘の力で人間に戻ったとしても――この罪が灌がれることはない。ならばいっそと俺は――」
APソルジャーは懸命に、彼に掛ける言葉を探す。その間に、ドゥルジは話を続けていた。
「――俺は、復讐を誓った。俺をこの体にした徳川清山を倒し、この世界を滅ぼすと」
「……」
「だが、結果はこの始末。いたずらに、侮れない敵を増やしただけだったようだな」
すると――彼の体が、下半身から肉が焼ける音を上げ、溶解を始めた。体内の毒液を調整する機能が、戦闘で故障したためだ。
刻一刻と、男に死が近づく。
「お前も同じだぞ、南雲サダト。人間の自由だ平和だと抜かしたところで、誰もお前に感謝などしない。誰も、お前を覚えない。――ヒーローなんてマネをやれるのはNo.5のように、その覚悟をしょってる奴だけさ」
「……俺も、あなたのようになるしか、ないのか」
「ああ、そうさ。地獄の底から、賭けてやってもいい。もしその時が来たら、そいつに処理してもらえ。俺のように――ブゴッ」
言い終えることは、叶わなかった。すでに上半身、首と来ていた溶解は口元まで及び、肉と血に塗れた泡が、ドゥルジの言葉を飲み込んで行く。
やがて血の匂いを纏う泡は、最後に残った頭さえ埋め尽くし――人の形をした跡だけを床に残して、男の存在を抹消してしまった。
誰一人、語る者はいない。異形の姿を持つ者もいない。変身を解いた南雲サダトと吾郎だけが、生気を持たない闇の中に取り残されていた……。
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