第一章 鉄仮面の彦星
第11話 紅き一蹴、紅き一閃
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「ぐわあああァァァアァアァアッ!」
悲痛な叫びと共に、エチレングリコール怪人の体が吹っ飛ばされ、激しく壁にたたき付けられる。その衝撃で壁はひび割れ、彼はそこから剥がれ落ちるように倒れた。
「――やった、のか」
APソルジャーは、その光景からGの強さを改めて思い知る。シェードの技術が生み出した、最強の改造人間。そのポテンシャルの、一端を。
「あんな人に、俺達は挑んでたのか……。ハハ、前座呼ばわりも納得だな」
思わず、乾いた笑いが零れてしまう。――その時だった。
「お、のれ……!」
「!? まだ生きて……!」
背後から聞こえた、年寄りのようなしゃがれ声が響く。APソルジャーは慌てて振り返り――戦いが終わっていなかったことに驚愕した。
――だが。彼の眼前に倒れている男は、もはやエチレングリコール怪人ではなかった。
「……!?」
APソルジャーは、思わず目を見張る。彼らの前にいるのは、あの怪人の正体である……一人の若い男性だったのだ。
怪人が人間態を持っている事自体は、別段珍しい事でもない。7年前のフィロキセラ怪人だって、織田大道という人間としての側面を持ち合わせていた。
だが、シェードの改造人間との実戦経験がなかったサダトにとっては……人の身を持つ相手と殺し合いをしていた、という事実を初めて突き付けられた瞬間だった。
Gはエチレングリコール怪人の人間態――ドゥルジを一瞥し、深く頷く。
「そうか、彼が……」
南雲サダトを始めとするAPソルジャーの面々を苦しめ、Gを倒し、徳川清山さえ滅ぼそうとしていたエチレングリコール怪人の正体はやはり――独りの人間なのだ。
「あなたが……」
「く、ふふふ……いくら怪物を気取ろうと、一皮剥けば改造人間などこんなもの、か」
人間としての姿になったエチレングリコール怪人――だったドゥルジは、自虐するように嗤う。その声には、怪人態だった時のような威風はかけらも見られない。
「俺はかつて――正義の為と信じ、シェードの人体実験に身を捧げた」
息を整えた男は、静かに己の過去を語る。
「だが――俺は異形の怪物と化し、いつしかテロリストのみならず、人々までも襲うようになっていた。戦闘中の事故で洗脳が解けたあの時は、自らの罪深さに絶望したものだ」
Gはそこまで聞くと、僅かに目を逸らしてしまった。共感する所があるからだ。
――彼自身、あのテレビ局のテロに荷担していたのだから。
「だが、それだけで俺は諦めなかった。――この力で、人々の為に働こうと決意してな。俺はこの力を以て、ある災害に苦しむ人々を助け出した。しかし……」
顔を上げて過去の栄光を、精一杯の希望を振り絞るように語ったかと思うと、そ
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