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仮面ライダーAP
第一章 鉄仮面の彦星
第10話 変身、APソルジャー
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もある事故がきっかけで洗脳から解き放たれたばかりの頃は、人間の心を以て善行を試みたものだ」
「……!」
「だが――奴らは俺を怪物と罵倒したのだ! 助けた事実など無視して!」

 これまで見受けられなかった、エチレングリコール怪人の真意が、根底の感情が、露呈しようとしていた。

「俺がそんな苦しみに苛まれた後になって……あの小娘がのこのこと、善人ヅラで改造人間を人間に戻し始めてから――俺は決めたのだ。復讐をな!」
「……!」
「そう。俺を迫害するこの世界と俺をここまで追い詰めた徳川清山への復讐! ただそれだけが、俺を駆り立てる全てだ!」
「そんな……そんなことって!」
「――ここの研究員共はよく働いてくれた。いずれ私に始末される運命も知らず、徳川清山を助ける為だと信じ続けてな……。実に下らん!」

 研究員の死体を踏みにじる異形の怪人。人間としての心を持ちながら、人間らしく生きる事や大切なものの為に戦う事を諦めた男の姿が、そこにあった。
 事実にうちひしがれ、俯くしかなかったサダトが、静かに口を開く。

「例えそうでも……俺は、立ち向かう。戦い続ける! 大切なものは――これから見つけられるから!」
「知った風な事を。もういい、貴様も消え失せろ!」

 ――その時。どこからともなくエンジン音が響いて来た。

「……んッ!?」
「来るな――奴が!」

 このエンジン音は――APソルジャーが使うバイクの物ではない。
 ならば――答えは一つ。

「――はぁあぁああッ!」

 刹那――怪人の頭上を一台のバイクが飛び越えていった。そのバイクは、滑らかな動きでサダトの傍に着地する。
 そして、そのバイクから白いジャケットを纏う青年が颯爽と降りて来た。

「あ、あなたは!」
「現れたな――No.5!」

 そう。そこには、元ソムリエの改造人間「吾郎(ごろう)」の姿があったのだ。思わぬイレギュラーの出現に、サダトは戸惑う。

「どうして……! これは俺の問題だって!」
「君の体は、僕を基盤に作られたのだろう? なら、僕にとっては半身だ。僕自身の問題とも言える」
「う……」

 サダトの抗議をあっさりあしらうと、吾郎はエチレングリコール怪人を見据える。

「残念だが、食前酒の時間は終わった。ここからは――メインディッシュのようだね」
「――貴様も、俺と同じだNo.5。人間社会は貴様を決して受け入れない」

 非情な現実を、怪人はストレートに言い放つ。しかし、吾郎の毅然な姿勢に揺るぎはない。

「それでも僕は戦う。貴様があり得ないと叫ぶ、愛という幻想に賭けて」

 彼の手元に、真紅のワインボトルが現れ、腰にワインオープナーを思わせるベルトが現れた。

「――俺も、賭けていいです
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