第一章 鉄仮面の彦星
第8話 たった独りでも
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身体だからこそ、出来る事もある。まだ全てが失われていないなら、失われていないものから新しい大切なものを、見つけだしたい。俺は……そう思うんだ」
「さ、サダト様……まさか!」
「君は他の4人を助けてあげてくれ。俺は――カタを付けてくる」
それが、今のサダトが求める願いだった。それを察したアウラは、言葉が出るよりも早く腕に全力でしがみ付き、引き止めようとする。
だが――改造人間のパワーを前にしては、何の足止めにもならない。
「サダト、様……」
「――大丈夫。絶対、帰ってくるからさ。信じて、待っててくれ」
加えて、そう言い切られてしまっては。もう、アウラには見送ることしかできない。APソルジャー専用のバイクに跨る彼の裾から、名残惜しげに少女の手が離れて行く。
「君は……これから何処へ向かうつもりだ」
そんなサダトに、Gは背後から声を掛ける。
「ここから少し離れた所に、食前酒計画を進めていた地下研究所があるんです。奴はそこにいるはず」
サダトは、Gの様子を伺うと、一つ付け足した。
「あなたは手を出さないでください。これは俺達……APソルジャーの問題です」
それだけ言い残すとサダトは独り、廃墟を後にしていく。そこにはアウラとG、そして4人の元APソルジャーが残された。
「……」
何も言わず、Gはサダトが旅立った方向を眺めている。
「サダト様……」
一方。アウラは、独り戦いへ赴いて行くサダトの背を視線で追い、祈るように指を絡めていた。
Gはそんな彼女をしばらく眺めると、彼らに背を向け、自らのバイクに跨がる。
「君の帰りを待っている人がいる……なら僕は、君を死なせるわけには行かない」
エンジンが火を噴き、彼のバイクは猛烈な勢いで廃墟を飛び出していく。あの青年の向かう、地下研究所を目指して。
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