第一章 鉄仮面の彦星
第4話 束の間の……
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
すこともできる。彼女は改造人間にされた人々を救える、唯一の希望だ。絶対に守らねばならない。
(……!?)
その思いを新たにした時。得体の知れない気配の数々が、サダトの第六感に警鐘を鳴らした。その殺気を後方に察知した彼は、素早くハンドルを切ると進路を変え、自宅から遠ざかって行く。
彼の行方を追う数台のバイクは、彼の背をライトで照らしながら、付かず離れずといった距離で彼を追跡する。
(来たな……!)
そんな追っ手を一瞥したサダトは、行き慣れた狭い道を駆け抜け、林の中へ入り込んで行く。無理に追おうとしたそのうちの何台かは、そこで木にぶつかったりバランスを崩したりして、次々と転倒してしまった。
狙い通りに撒いていけている。その光景から、そう確信していたサダトの前に――
「遊びは終わりだ、小僧」
「……ッ!?」
――悍ましい風貌を持つ怪人が、全身から粘液を滴らせ、正面から待ち構えていた。舗装されていない林の中で、相手が待ち伏せていたことに驚愕する余り――サダトは声を上げることすら出来なかった。
そして――瞬く間にバイクを片手でなぎ倒され、サダト自身も吹き飛ばされてしまう。
「うわぁぁああぁあッ!?」
舞い上がる身体。回転していく視界。その現象と身体に伝わる衝撃に意識を刈り取られ、サダトは力無く地に倒れ伏した。
彼を見下ろす人体模型は――口元を歪に釣り上げ、ほくそ笑む。
「ようこそ――シェードへ」
――しばらく時が過ぎ。かつて青年がいた場所に彼の姿は見えず、彼の私物であるオートバイだけが残されていた。
そして、そこにもう一台の、純白のカラーが眩しいオートバイを駆る男が訪れる。
彼はヘルメットを外し、今や無人となったそのレーサーバイクを眺めていた。
「遅かったか……!」
口惜しげに苦虫を噛んだ表情で、青年はバイクに駆け寄る。
そのバイクのすぐ傍に、木の葉や草が何かに溶かされた跡があった。
自然のものとは思えない、その痕跡。それと倒れたオートバイを交互に見遣る男は、眉を顰める。
「これは……」
そして素早く立ち上がると――自身の愛車に跨り、弾かれるように走り出して行った。
「シェードの仕業に違いない……無事であればいいが……!」
時は一刻を争う。彼の表情が、そう語っていた。白いジャケットを纏うその男はさらに
愛車を加速させていく。
「また一つ、尊い命が奪われようとしている……許すわけには行かない!」
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ