第一章 鉄仮面の彦星
第2話 エリュシオン星から愛を込めて
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地球人とは比にならない絶対的な美貌の持ち主であった。サダトの胸元程度しかない身長から察するに、恐らく10代であるが、そのプロポーションは到底、少女と呼べるようなものではない。
その美しさに、思わずサダトも息を飲むが――それを悟られまいと咳払いをして、平静を装う。
「……南雲様を、このような事態に巻き込んでしまったことには……もはや、弁明の余地もありません。――申し訳、ありませんでした」
「いいさ、別に。乗りかかった船ってやつだろ? こういうの。……さて、だったらなるべく外は出歩かない方がいいな。行く先が見つかるまでは、ここにいた方が安全かも知れない」
そんな彼女は死刑を待つ囚人のように目を伏せていたのだが――この場の空気に全くそぐわない、サダトの場違いな反応に思わず顔を上げてしまった。
「怒っては……おられないのですか? 私は、自分の勝手な都合であなた様を巻き込んで……!」
「君が追われてるのは、苦しんでる人を救ってきたから――正しいことをして来たからなんだろ? 正しい人を責めたくは、ない」
「……!」
その言葉に、アウラは驚愕したように目を見開くと――潤む瞳を細め、口元を両手で覆う。感極まった自分の想いを、懸命に隠そうとして。
だが彼女は、その思慕の情に嘘を付くことは出来なかった。
「よし、じゃあこうするか」
「……?」
ふと、サダトは肘をちゃぶ台の上に乗せて、小指を立てた。その意図を察することが出来ず、アウラは小首をかしげる。
「南雲様、それは……?」
「んー、約束を守るためのおまじない、かな?」
「約束……」
「ああ。君のやることを信じる、っていう……約束」
「……」
その目的と意義を知り、異星の姫君はほんのりと白い頬を染めて――サダトの向かいに座り、自分の小指を絡めた。
「南雲様……」
「ん?」
「私、私……出逢えた人が、あなたで良かった……」
「……そうか」
それは、単なるおまじない。
だが、知る者も頼る者もいないまま、孤独に救済の旅路を歩んできた彼女にとって――小指から伝わるサダトの体温は、かけがえのない温もりとなっていた。
……時は2016年。
人間の尊厳を顧みない悪の組織と、孤独な愛の戦士の戦いが幕を開けて、7年が過ぎようとしていた……。
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