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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#6
呪縛の死線 玲瑞の晶姫VS漆黒の悪魔
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本体を耳から離す。
 まるで今にも通話口から群青の炎が噴き出て、
周囲一体を焼き尽くしてしまいそうな激しい気勢だった。
「はぁ、まぁ確かそのような名前だったと認識しておりますが。
マスター以外では、唯一まともそうな人物なのであります」
 ガダンッ! という大きな音が、電話越しに聞こえた。
 ケータイを手から落としたのだとヴィルヘルミナは想ったが、
実際は不安定な体勢で腰掛けていたスツールから
マージョリーが転げ落ちた音だというのを彼女は知らない。 
「そ、その男! 一体どんな感じ!?
見た目はハンサムでそこらの女よりよっぽどキレイで
背は高くて脚は長くてスタイルも抜群で頭は切れてよく気がついて話も上手くて
ピアノも巧くて意外にタフで優しくて温かくて正義感が強くて誠実で誇り高い
何もかもサイッコーな男ッッ!!?」
「……」
 よくそんな長台詞を舌を噛まずに息継ぎもせずに言えるものだと
半ば感心しながらヴィルヘルミナは沈黙する。
 確かに水準以上の美男子だとは想うが
(所謂 “いけめん” とかいうヤツだろうか?)
それにしてもここまで正気を逸脱するものだろうか。
 フレイムヘイズ屈指の “自在師”
紅世の徒の間では無慈悲な殺し屋として怖れられる
“弔詞の詠み手” が。
「アンタいまッ! どこにいるのッ!?」
 最初の凋落した声音はどこへやら、
俄然精気、否、覇気を取り戻したマージョリーが
通話口から這い擦り出してきそうな暴威で叫ぶ。
 事実の検討は良いのか、もし間違っていたらどうするのだという
諫言を挟ませない勢いにつられて、ヴィルヘルミナは答えていた。
「シンガポールの、首都であります。
しかし滞在の時は短くすぐに西方を経て、南アジア方面に」
「シンガポールねッ! アンタ! 絶対そこから動くんじゃないわよ!!
チビジャリの気配も在るけど、馴染みのアンタの方が解りやすいからッッ!!」
「い、いえ、でありますから、私の一存では決めかねる事柄でありまして、
まずはマスターの認可を……あの、もしもし?」
 一体何をやっているのか、通話先からドダンバダンという物騒な音が聞こえてくる。
「じゃあ今すぐそっちに行くわ!
ジジイは色仕掛けでもなんでもいいからテキトーに誑し込んでおきなさい!
それとこの事は絶対に他言しないコト! いいわねッ!」
「……」
 姿は見えないが何故か、新品のタイトスーツとヒールにグラス、
そして化粧もバッチリと決め込んだ一人の凄艶なるフレイムヘイズの姿が浮かんだ。
「じゃあまた、すぐに逢いましょう。
くれぐれもノリアキに変な気起こしちゃダメよ?
もう無駄だから。じゃあね、フフフフフフ……」
 最後に同性でもゾッとするような色香を漂わせて、通話は切れた。
 無
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