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真田十勇士
巻ノ六十 伊達政宗その十一

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「だからじゃ」
「内通に応じずにですか」
「そうじゃ、公にするのじゃ」
「また凄いことをされますな」
「こうしたことは楽しんでこそじゃ」
 笑みを浮かべてだ、秀吉は弟に話した。
「謀はな」
「いつも通りですな」
「そうじゃ、敵を乱し徹底的に弱める」
「そして戦わずして勝つ」
「その為のものだからじゃ」
 だからこそというのだ。
「謀もふんだんに使うが」
「どういった謀を仕掛けるか考えそれを実行するのも」
「楽しんでこそじゃ」
「まさにですな」
「そうじゃ、ではよいな」
「はい、兄上の思われるままに」 
 このことについてはこう答えた秀長だった。
「されて下さい」
「それではな」
 こうしてだった、実際にだ。
 秀吉は松田、大道寺の内通には応じず逆にそれを公にした。しかもその内通の文を氏政に送った。その文を読んでだった。
 氏政は文を持つ手どころか身体全体を震わせてだ、己の前にいる家臣達に言った。
「これはじゃ」
「間違いなく、ですか」
「お二人の文」
「左様ですか」
「二人の字じゃ」
 松田と大道寺、二人のだ。
「確実にな」
「まさか」
「お二人が内通なぞ」
「籠城を主張されたのですが」
 その二人こそがというのだ。
「そしてご家老衆の中でも重き方々」
「その方々が内通とは」
「信じられませぬ」
「まさか」
「わしもじゃ」
 氏政も呆然として言う。
「この様なことになるとは」
「これではです」
「一体誰が信じられるか」
「よもやと思いますが」
「これでは」
「御主達はどうなのじゃ」
 氏政は股肱の臣達をだ、あからさまに疑う目で問うた。
「大丈夫か」
「我等代々北条家の臣です」
「長きに渡って北条家の禄を頂いております」
「ですからそれは」
「ないですが」
「あの二人もそうであった」
 松田、大道寺もというのだ。
「しかしじゃぞ、ましてやじゃ」
「まして?」
「ましてといいますと」
「一体」
「親兄弟はどうじゃ」
 こう彼等に言うのだった。
「御主達の」
「それは」
「何といいますか」
「そう言われますと」
「それは」
「わからぬ」
 どうにもという返事だった。
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