第33話『心配』
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ない?」
「あ、何か言ったか?」
「何でもない…」
2人の肩を借りて、不格好な歩きを始めて早数秒。
廊下に出た途端に耳に入ってきた轟音は、俺のまた眠りそうな意識を覚醒させるには、十分過ぎる目覚ましだった。
ちなみにその轟音のお陰で、多少の小声は隣に居る二人にすら届かない。
俺は続けて窓の外を見る。
先程保健室で見た時計によると、まだ時間は夕方前。
なのに、空は深夜の様に真っ暗だった。廊下はその暗さとは対照的に蛍光灯が輝いて明るいので、つい「学校にお泊まりなのでは」と、内心ドキドキしてきた。
「三浦、階段だ。行けるか?」
「ちょっと辛いってのが本音だけど…」
廊下の先を曲がると、階段が目の前に立ちはだかる。
普段はただの斜面だが、怪我人の今となっては絶壁に見えた。
「じゃあここは私が背負うわ。どうせあんたは力無いし」
「おい、見くびって貰っちゃ困るぞ。俺にだってそれくらいの力はあるさ」
「あ、そう」
ふと、重心が移動するのを感じた。
どうやら、莉奈が俺に肩を貸すのを止めたようだ。
つまり、暁君だけで俺を支えてることになるんだけど…。
「ほら、早く階段上ってよ」
「うるせぇな、今やってんだろ・・・あ、でも、うぉ……やば、潰れる」
「…俺ってそんな体重あったっけ?」
「これがこいつなのよ、晴登」
俺の重さが、暁君の肩一点に集中する。
すると予想通りと言えば予想通りだけど、暁君の身体がみるみる沈み始めた。
一瞬、俺は自分の体重が常人よりあったかと疑うが、生憎筋肉すらもあまり付いていないため、どう考えても常人より軽い。
つまり、暁君は本当に非力なのだ。
「やっぱ私がやるわ。行くよ、晴登」
「あ、そんな引っ張られたら痛いって!」
「もう、ダメだ…」
半ば強制的に暁君から引き剥がされた俺は、莉奈に引っ張られて階段を上る。その乱暴さにあちこち痛むが、贅沢は言えない。
その一方で、階段の下で疲れ果てて倒れている暁君が心配だ。俺のせいではないはずなのに、なぜか心が痛い。
「暁君、何かゴメン…」
小さく、小さく呟いた。
俺は無罪だ、と心の中で思いながら。
*
「し、失礼しまーす…」
目立たないようにそっとクラスのドアを開ける。
見えたのは、いつもの教室の風景。雰囲気的には休み時間を連想する。
椅子に座って駄弁る皆の様子は、外の様子を微塵も気にしてないといった感じだった。
まぁ俺が教室に入った瞬間、空気が変わったけど。
「ど、どうも」
皆の視線が集まる。
静寂の中、まるでステージに立つアイドルの様なポジショニングの俺
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