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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十七話 新たな火種
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ば、当然だがヴァレンシュタインを始め、エーレンベルク、シュタインホフ、リヒテンラーデ侯は死ぬ事になるだろう……。

「後はシュターデン大将の運と力量次第か」
「そういうことになります」
「しかし総司令官が別働隊派遣を受け入れるとは思わなかったな。作戦方針を決めた直後だ、受け入れるのは難しいはずだが」

グライフスはわしの言葉に軽く苦笑した。
「戦争では状況は常に変わるのです。方針は決めてもそれに固執するのは危険です。状況の変化を読み適切に対処しなければなりません」

「なるほど、臨機応変と言う事か」
「そうです。その点でもシュターデン大将には多少の不安が有ります。不測の事態が起きた時、迅速に対処できるか……」
グライフスの語尾は呟くような口調になった。視線はスクリーンに向けられたままだ。

「総司令官のようにかな?」
リッテンハイム侯の問いかけにグライフスは首を振って否定した。
「小官は軍務の殆どを参謀として過ごしました。参謀と言うのは考えるのが仕事です。もしかすると戦場の指揮官としては少し決断に時間がかかるかもしれません。今回の侵攻軍の派遣ももっと早く決断すべきだったのかも……」

妙な男だ、地位が上がれば上がるほど自分の欠点は隠したくなるものだ。それなのにグライフスは平然と自分の欠点を話した。無防備なのか、それともこちらを信頼していると言う意思の表明なのか……。だが嫌な気分では無かった。なんとなくだがグライフスに対して好感が湧いてきた。

「ではグライフス総司令官から見て臨機応変の才を持つ人物とは誰かな?」
わしの問いかけは幾分笑いの成分が入っていたかも知れぬ。本心から訊ねたかったのではない、ただグライフスともう少し話をしたかった。

わしの気持が分かったのかもしれない、グライフスは笑みを浮かべた。
「これは、公のお言葉とも思えません。既にお分かりでは有りませんか?」
「すまぬ、試すつもりでは無かったのだ。ただ卿と少し話したくてな……、卿もそう思うか」
グライフスは頷くと話を続けた。

「……もう三年近く前になります。ヴァンフリート星域の会戦で小官は敵に、いえ戦場に振り回されました。敵も味方も混乱していたと思います。そんな中で戦場を制御していたのがヴァレンシュタイン元帥でした。あの時、自分の限界を思い知らされたような気がしました……」
「……」

「あれから三年です……、大佐だった彼は元帥になり当代の名将として全ての人に知られるようになりました。おかしな話です、あの当時は己の未熟さを思い知るだけでした。しかし今は彼と無性に戦いたいと思います。あれから三年、小官は何を得たのか、何が足りなかったのか……。戦う事でそれが分かるかもしれません……」

何を言って良いのか、わしには分からなかった。グラ
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