巻ノ六十 伊達政宗その六
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「だからよいな」
「わかりました、ですが」
「利休のことか」
「はい、兄上は近頃利休殿を疎んじておられますが」
「どうもな」
秀長には嘘は言えない、こう判断してだった。秀吉は秀長に対してはありのまま隠さず言うことに決めた。
それでだ、秀長にはっきりと答えたのだった。
「あ奴は力を持ち過ぎておる」
「茶の道を通じてですか」
「そうじゃ、多くの者があ奴を慕って集まりじゃ」
利休のその周りにというのだ。
「奴の言うことを聞く様になっておるな」
「だからですか」
「力を持ち過ぎておってじゃ」
「兄上の天下を脅かすと」
「いや、あ奴には野心はない」
秀吉はこのことも見抜いていた、利休を疎んじているのは確かだがそれでもその目はしかと見ているのだ。
「それはない」
「はい、利休殿は野心はありません」
「ただ茶の道を進んでおるだけじゃ」
「あの御仁は求道者です」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「それに他ならぬ」
「天下を望まれていないのなら」
「違う、わしに謹言するのはいいが」
それを受ける器は秀吉にある、しかしというのだ。
「わしの言うことを聞かずじゃ」
「勝手にですか」
「茶の道を進みさらに力を持ちじゃ」
「かつての寺社の様な」
「そんな力を持つのではないか」
「だからですか」
「あ奴は危ういと思っておる」
どうにもというのだ。
「わしに従おうとしなくなりこれ以上力を持てば」
「兄上の天下の邪魔となる」
「だからじゃ」
「利休殿は、ですか」
「そう思っておるが御主はか」
「利休殿はその様に考えておられませぬ」
確かに相当な力を持っているがというのだ。
「求めるのは茶の道だけであり」
「力を持っていてもか」
「それを兄上に反する様に使うことはです」
「ないか」
「そうしたことは思っておられませぬ」
「御主はそう見ておるか」
「兄上、疑いの心が強くなっておりまする」
兄、秀吉のその目を見ての言葉だ。
「ですから」
「この様に言うというのか」
「はい」
その通りという返事だった。
「利休殿は決してです」
「そうしたことはせぬか」
「そうした方ではありませぬ」
利休の本質を語り彼を庇うのだった。
「兄上にはそれがしだけでは足りませぬ」
「利休もか」
「お二人がいてこそです」
「政が成るか」
「ですから」
「利休もか」
「大事にされて下さい」
兄上に頼み込む言葉だった。
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