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真田十勇士
巻ノ六十 伊達政宗その二

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「戦の後の政じゃ」
「それが大事ですな」
「そうじゃ、だからじゃ」
「今の時点で考えておられますか」
「大坂の近くには厄介な者は出来るだけ置きたくない」
 秀吉は今は真顔だった、それだけ真剣な話というのだ。
「だからな」
「東国に、ですな」
「関東と奥羽にじゃ」
「それぞれですな」
「厄介な者を置き」
 そのうえでというのだ。
「その厄介者を見張るな」
「そうした者もですな」
「置きたい」
「では」
「その話は後じゃ」
 今ではないというのだ。
「後で話す」
「小田原が陥ちるまでにはですな」
「話したい、御主ならばこそな」
「話せることですか」
「そうじゃ、やはり御主は必要じゃ」
 弟の顔を切実な目で見つつ言った言葉だ。
「わしにはな」
「有り難きお言葉」
「しっかりと食べておるか」
 まるで子供に言う様な言葉だった、今のは。
「そして酒も控えてよく寝ておるか」
「そうしておりまする」
「また痩せた気がする」
 秀長を見ていると、というのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「心配になるわ、御主と捨丸に死なれては」 
 それこそとだ、また言った秀吉だった。
「わしは困る、だからな」
「それがしはですな」
「何時までもわしの傍にいてくれ」
 願う様な言葉だった。
「よいな」
「そうする様にします」
「頼むぞ、この戦で終わりではないからな」
「政のこともですな」
「そうじゃ、御主がいてこそのわしじゃからな」
 それでというのだ。
「生きよ、いいな」
「わかりました」
 秀長は兄の言葉に頷きはした、だが秀吉の心配は晴れていなかった。しかしその晴れない気持ちは今は押し隠してだ。
 そしてだ、朝食を終えてだった。身支度を整え。
 政宗を出迎える用意に入った、そこで。
 秀長達に上座からだ、こう言った。
「ではこれよりじゃ」
「はい、伊達殿が来られます」
 家康が言ってきた、場には秀長と彼の他には織田信雄もいるが信雄はこれといって話をしようとはしない。
「間もなく」
「そうであるな」
「では」
「うむ、通せ」
 その政宗をというのだ。
「従っている者達もな」
「片倉小十郎殿と伊達成実殿も」
「二人共じゃ」
 こう家康に答えた。
「是非な」
「さすれば、ただ」
「ただ?」
「何やら様子がおかしいです」 
 家康はここでこうしたことをだ、秀吉に話した。
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