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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十六話 感傷との決別
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デ侯は腕を組みこちらを見ている。
「……宮内省、内務省、フェザーンそしてローエングラム伯が絡んだクーデターだ。まあローエングラム伯は伯自身よりもその周囲が動いたのじゃろうがの」
「……」
おそらくそうだろう。オーベルシュタイン、ジークフリード・キルヒアイス、この二人が動いたと見て良い。ラインハルト自身はクーデターは認めても俺の暗殺など認めまい。それでは俺に勝った事にならない。あの男は覇者なのだ。覇者には覇者の誇りがある。
「残念だが内務省とフェザーン、ローエングラム伯の関与は証明できぬ。証明できぬ以上、彼らを罪に問う事は出来ぬ。つまりクーデターの芽は残ったままと言う事になるの」
「……ローエングラム伯は排除します」
リヒテンラーデ侯が俺を見ている。何処か値踏みするような目だ。
「何時じゃ」
「今は無理です。内乱勃発早々、別働隊の指揮官を罷免は出来ません」
「卿はローエングラム伯には甘いの」
「……」
リヒテンラーデ侯が顔を耳元に寄せてきた。そして囁くように言葉を出す。
「内乱鎮圧後ともなれば伯は武勲を挙げて戻ってくる。反って排除は難しくなろう。やるなら今じゃ」
「……」
思わず侯を見た。顔を上げた侯が厳しい視線を向けてくる。
「ローエングラム伯を排除し内務省を制圧する。早いほうが良いのは卿とて分かっていよう」
「……」
内務省の制圧か……。確かにこのままでは内乱の芽を残す事になる、優先するべきだろう。しかし……。
「あの男を殺したくないか……。卿は妙な男じゃの、あの男の危険性を十分に承知しながらあの男を庇う。何故じゃ?」
「……」
答えられなかった。別に庇っているつもりは無い。あの男を排除すると決めたのだ。そう思ったが、答えられなかった。
「分かっておるのか、伯を、伯の周囲を反逆にまで追い込んだのは卿じゃぞ」
「!」
俺がラインハルトを追い込んだ? 何を言っている。冗談かと思ったがリヒテンラーデ侯は厳しい表情をしている。冗談を言っているのではないらしい。
「卿はいつでもローエングラム伯を排除できた。押さえつけ、それに反発するようなら首にすれば良かったのじゃ。だがそうはしなかった。適当に優遇し、適当に押さえた。伯とその周囲にしてみれば卿に弄られているようなものじゃろう」
「馬鹿な……」
リヒテンラーデ侯は俺の言葉を全く気にもせず話し続けた。
「猫が鼠を弄ぶような物よ。ローエングラム伯が活路を求めても常に卿がそれを塞いでしまう。そのくせそれ以上は何もせぬ。今回のクーデターは卿自身が招いた事じゃ、まさに窮鼠、猫を噛むじゃの……。卿は伯が自ら頭を下げる事を期待していたのか?」
「……」
リヒテンラーデ侯が俺を哀れむような顔で見ている。馬鹿馬鹿しい、ラインハルトが自ら
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