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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百七十六話 感傷との決別
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芝居が出来ないなら来なければ良いのだが、俺の状態を自分の目で確かめたかったのだろう。気持は分かるが面白くは無かった。いっそ死にそうなんです、とか言って喘いで見せれば良かったかもしれない。大喜びで帰っただろう。
その後にミュッケンベルガー元帥とユスティーナがやってきた。ユスティーナは来た早々に泣き出し、元帥は苦虫を潰したような表情をしている。俺としては慰めたくても小さな声しか出ないし、動くのは辛い。父親の前で娘を泣かす悪い奴にでもなった気分だ。言っておくが俺は加害者じゃない、被害者だぞ。痛い思いをしたのは俺なんだ。
疲れが出たのだろう、俺は今朝から少し熱がある。おかげでヴァレリーは心配そうな顔で俺を見ているし、女医さん(クラーラ・レーナルトと言うらしい、なんと独身だった)は怖い目で俺を睨む。俺の所為じゃない、俺は可哀想な被害者だと弁解したのだが全く無視された。
まあ、そんなこんなで今日の俺は絶対安静、面会謝絶という一種の隔離状態にある。例外的に部屋に居るのはヴァレリーだけだ。今日は一日ゆっくり出来るだろう、そんな事を考えてウツラウツラしていると悪い老人に起された。
「思いの外に元気そうじゃの」
「……」
リヒテンラーデ侯だった。俺の枕元に座り、嬉しそうに俺を見て笑っているが、どう見ても単純に俺の無事を喜ぶ風情ではない。悪事の相談相手が生きてて良かった、そんな感じだ。
上半身を起そうとすると侯に押さえつけられた。そのままでという事らしい。俺としても寝ているほうが楽なので甘えさせてもらう事にした。ヴァレリーはいつの間にか居なくなっている。目の前の老人が外させたのだろう。
「面会謝絶のはずですが」
「つれないの、私と卿の仲ではないか」
「……」
どんな仲だ? ニタニタ笑いながらリヒテンラーデ侯に言われると今更ながら俺は悪人の仲間なのだとげんなりした。それでも目の前の老人は困った事に命の恩人だ。七十を過ぎて暗殺者をブラスターで撃退する、どういう爺だ?
「陛下と侯のおかげで助かったようですね」
「私はともかく、陛下の御働きによるものである事は間違いないの。卿は運が良い」
リヒテンラーデ侯が神妙な表情になった。この老人にも可愛いところがある。陛下が絡むと顔から悪相が消え、普通の老人になるのだ。それが無ければクラウス・フォン・リヒテンラーデはただの陰謀爺だろう。
「何かおかしいか?」
「いえ、何も……」
俺はいつの間にか笑っていたらしい。リヒテンラーデ侯も俺が何故笑ったか気付いたのだろう。不機嫌そうに一つ鼻を鳴らすと悪人面に戻った。宮廷政治家、国務尚書リヒテンラーデ侯の顔だ。
「何が起きたかは知っておるな?」
「ええ、クーデターですね」
「うむ」
少しの間沈黙があった。リヒテンラー
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