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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 31
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もないでしょう? こいつらにできないなら……私がこの手で殺してあげる!」
 ザザザッと、騎士達が現れた森の枝葉が激しく揺れ動く。
 そして
 「愚かな……」
 (え?)
 ミートリッテを抱えるベルヘンス卿が、地を駆る女性の影を見てぽそりと零す。
 光瞬く短剣の切っ先が、優雅に立つアーレストの心臓目がけて軌道を描き……神父が薙いだ左腕で、あっさり弾かれた。
 更に、「イオーネの後ろで」風を裂く音。
 背を反らせて避けた彼女が、襲い来た誰かに視線を向け……驚愕に顔を歪める。
 「お前は……!」
 「悪いな。これも「私」の仕事だ」
 耳に心地好く響く、男性の声。
 突然イオーネの背後に現れた誰かは、虚空を斬った長剣を翻し
 「お前が見続けた悪夢をこそ。今日、此処で終わらせてやる」
 「ーーッ!」
 地を蹴った勢いに乗り、体勢を立て直そうとするイオーネの背中に刃を滑らせた。


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