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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 31
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たい予感が駆け抜けた。

 『アーレストが、狙われている』

 「神父様、危ない!!」
 「!」
 咄嗟に大声を出すミートリッテに驚いたベルヘンス卿も、振り返った直後、目を剥く。
 「アーレスト様!」
 騎士達はミートリッテの警護で動けない。一人のほほんと水際に立つアーレストは、のそっと右手を上げ
 「あ、はい。どうぞ、私にはお構いなく」
 
 ぱし。 ぱた。

 「…………は?」
 ミートリッテにふわりと微笑み返し。
 対岸に背を向けたまま。
 素早く下ろした手で。
 飛んで来た何かを掴んだ。叩き落とした。
 ふむ。などと浅く息を吐きつつ、手中のそれをまじまじと見つめる。
 「毒矢でしょうか? 恐ろしい物を使いましたねぇ……河に落ちたら水棲生物達に害が出るじゃないですか。持ち帰って、厳重に保管してくださいね。イオーネさん」
 ミートリッテ「…………」
 ベルヘンス卿「…………」
 騎士達「「「…………」」」
 ハウィス「…………」
 クナート「…………」
 平穏な夜の静寂に包まれる河周辺。
 (え……っと……)
 ……一旦、落ち着こう。
 崖上で見た時、河の幅は確か、少し大きめな林が楽に入りそうだなーとか、一戸建ての家屋を横一列に二十軒並べたくらいかなーとか思っていたが、あれはきっと気の所為だ。でなければ、ハウィス達に隙を作らせる目的で事前に入念な武器の仕掛けと避ける練習を死ぬほど繰り返したんだろう。うん。そうであってくれないと、(矢の飛距離も含めて)こんな超常現象は説明が付かない。
 だったら何故、イオーネ達までもが沈黙したのか……なんて、知るもんか。
 疑問を抱くな、関わるな。神父はこういう生き物だ。誰かと勝負をしていたつもりはないが、気にしたら敗けだ。
 「……本当、役立たずな連中ね。神父一人も殺せないなんて」
 苛立ちが籠ったイオーネの声にも、ついつい「いや……化物を殺せる人間なんて、この世界には存在してないんじゃないかなぁ……」と、暗殺者達を擁護したくなる。
 「……って……えぇッ!? 待って待って! おかしいから! 神父様が変なのは今更だから別に良いけど、どうしてそっちが神父様を殺そうとするの!? 仲間になったんじゃなかったの!?」
 微妙に失礼な発言だが、本人を含めて誰も咎めない。混乱するミートリッテの様子を、イオーネだけが鼻で笑う。
 「お前が伯爵の正式な後継者となった今、最も厄介なのがその男だからよ」
 (……どっちにとっても厄介者なのか。アーレスト神父……)
 呆れとも憐憫ともつかない表情でアーレストを見やるが、彼は飛んで来た二本の矢を適当な石の上にそっと並べている所だった。
 当然、全く気にしてない。
 「折角仔猫を檻へ入れてやったのに、邪魔をされたら元も子
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