Side Story
少女怪盗と仮面の神父 31
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が不足してる。
(マーシャルさんを助けてくれたし、完全な敵とは違うんだろうけど……。でも、現状ではあの人が一番厄介だ。どうにかして退けないと)
逃げるのは得策じゃない。
むしろ、単独で騎士達の傍を離れては確実にハウィス達の足を引っ張ると判断し、大人しくベルヘンス卿の腕に護られながらも、アーレストの動向を観察してみる。
と。
「??」
髪の次はシャツの裾を丸めてねじり絞っているアーレストの遥か向こう。
河を挟んだ崖側の岸辺で、何かがきらりと光った。
ほんの一瞬の輝き。
けれど、ミートリッテの全身に冷たい予感が駆け抜けた。
『アーレストが、狙われている』
「神父様、危ない??」
「!」
咄嗟に叫ぶミートリッテ。
その大声に驚いたベルヘンス卿も、振り返った直後、目を剥く。
「アーレスト様!」
騎士達はミートリッテの警護で動けない。
一人のほほんと水際に立つアーレストは、のそっと右手を上げ……
「あ、はい。どうぞ、私にはお構いなく」
ぱし。
ぱた。
「……………………は?」
ミートリッテにふわりと微笑み返し。
対岸に背中を向けたまま。
素早く下ろした手で。
飛んできた何かのうち、一つを掴んだ。一つは叩き落とした。
ふむ。などと浅く息を吐きつつ、掴んだそれをまじまじと見つめる。
「毒矢、でしょうか? これはまたずいぶん恐ろしい物を使いましたねえ。河に落ちたりしたら水棲生物に害が出るじゃないですか。これは持ち帰って厳重に保管してくださいね。イオーネさん」
ぽわん、ぽわんと、決して触れない幻の花を飛ばす神父。
身構えたまま、言葉もなく硬直する関係者達。
再び遠くに聴こえる夜行性鳥類の鳴き声。
平穏な夜の静寂に包まれる河周辺。
(えー……、っと……)
一旦、落ち着こう。
崖上から見た時、河の幅は確か少し大きめな林が楽に入りそうだなとか、庭付き一戸建ての家屋を横一列に二十軒並べたくらいかなとか思ってたが、あれはきっと気のせいだ。
そうでなければ、ハウィス達に隙を作らせる目的で、事前に入念な武器の仕掛けと、それを避ける練習を死ぬほどくり返していたんだろう。うん。
そうであってくれないと、背後から飛んできた矢を、目視もせずに片手で掴むとか、こんな超常現象は(矢の飛距離も含めて)説明がつかない。
だったら何故イオーネ達までもが沈黙したのか、なんて、知るもんか。
疑問を抱くな、関わるな。
アーレストはこういう生き物だ。
誰かと勝負をしていたつもりはないが、気にしたら敗けだ。
「……本当、役立たずな連中ね。神父一人も殺せないなんて」
苛立ちが籠ったイオーネの声にも
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