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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 31
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を回さなきゃ、作物は満足に育たない。作物の不足は、あらゆる生命の存続を危うくする。下が整わなきゃ上に乗ってる全部が一瞬でペシャッと潰れて全部おしまい。そんな人間社会の構図にも通じる当然の理窟も解らないとか! いい加減、頭足りなさすぎでしょ??』
『まあなあ……。確かに、ちったぁ額に汗して働く人間の苦労も考えろとは思うけど、あんま声高に愚痴んなよ。狂犬が強権を発動して叛逆罪だー! とか吠えまくるぞ』
『おお、怖い怖い。もっともらしい理由を付けて他人様から物を奪うのは、お偉い方々のお得意技ですものねえ。口紐を閉じておくのがせめてもの抵抗だなんて理不尽極まりないけれど、仕方ないのかしら。いつどこのお国でもあちら側の方々には分別能力が育てられないのか、開いている口のすべてに我が物顔で手を突っ込みたがる、品性下劣な悪癖がおありのようだし?』
『開いてる口だけなら、マシだけどな。閉じた口に無理矢理ねじ込まれても文句は言えないんだから嫌になる。つくづく真面目に働くのがアホらしいっつーか……っと、危ない危ない。この話は終わりだ終わり。行こうぜ』
『! え、ええ……、そうね。行きましょう……』



 ハウィスに連れられて、南方領一大きな街の市場を訪れた、あの日。
 たまたま近くに居た子供の存在に気付くまで続けられた、若い男女二人の会話が、まだ何も知らなかったミートリッテに教えてくれたもの。
 後にシャムロックを生み出すきっかけとなった者達。
 それこそが。
 かつて南方領全土で活躍していた劇場型の義賊『ブルーローズ』だった。

 いつから活動を始めていたのか、定かではないが。
 領端にも存在が知れ渡ってから十一年前に忽然と姿を消すまで、主立った貴族からのみ金銀財宝を奪い去り、時も場所も関係なく派手な演出を添えて一般民へ配り回っていたという、顔を隠した『南方領民の英雄達』。

(まさか、ハウィス達がブルーローズ?? でも、ハウィスは伯爵だって……今着てるのも、国軍所属騎士の制服で間違ってない筈。どういうこと??)

 信じられない思いで騎士達とハウィスをぎこちなく見回せば、ハウィスとクナートが唇を噛んでうつむき、ベルヘンス卿が苦々しい顔で舌打ちする。

「標的が一人だけとは思えなかったが……やはり、真の狙いは()()()か」
「! やっぱりって、じゃあっ」

 ギリギリ聞こえるかどうかの声量で忌々しげに吐き出された彼の呟きは、イオーネの言葉を肯定し、同時にミートリッテの疑問にも答えた。
 つまり

『ハウィス達は本物のブルーローズであり、イオーネ達の狙いは初めから、ハウィス達ブルーローズを苦しめることだった』

 バーデル王国の領土内で火付けした時、ベルヘンス卿が『同じことを何度何回くり返せば気が済む
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