暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜災禍の勇者と罪の鉄仮面〜
第1話 海賊、グランニールの一味
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返された矢は彼の足元に突き刺さり、その衝撃で石畳が一瞬浮き上がる。その瞬間を眼前で見せ付けられたシュバリエルは、目の前で父と対峙している男の実力を知り、戦慄を覚えるのだった。

「……それが警告だ。怪我をしたくなくば、大人しくしていろ」
「お、お前は……一体……!?」

 獅子波濤を見切ったばかりか、シュバリエルの方を一度も見ることなく矢を投げ返して見せた。しかも、彼に矢が当たらないギリギリのポイントに。
 そんな芸当を、自分と構えている最中に見せ付けられたグランニールは、険しい面持ちを浮かべる頬に、汗を伝わせた。

(……これほどの力を持ちながら、あくまで投降を求めるか。やはりこの青年、悪ではない。だが……シュバリエルが弓を引いた今の状況で、説得は難しかろう。……やむを得ん)

 そして、未知の強者という不確定要素と直面した老戦士は、一つの決断と共に走り出す。

「シュバリエル、ここは引くぞ!」
「と、父さん! オレはまだ……!」
「彼は強い。今の我々ではまず勝てん!」
「くッ……アルフ兄さんさえ生きていてくれたらッ……!」

 その指示に応じ、彼の血を引くシュバリエルも後に続いた。騎士達の頭上を飛び越し、二人が向かう先は、桟橋の向こうに浮かぶ海賊船。

「や、奴ら逃げるぞ! 追えェーッ!」

 これから激戦が始まると思わせてからの、グランニール達の突飛な行動に、騎士達は暫し呆気にとられていたが。いち早く我に返った隊長の指示のもと、一気に追撃を開始した。
 だがすでに二人は海賊船に飛び乗り、沖の彼方へと逃げ去っていた。小舟はあるものの、海上まで追いかけても船の砲台で迎撃されるのが落ちというもの。

「くそーッ! あんのクソッタレ共がーッ!」

 それを見ているしかなかった隊長は、地団駄を踏んで激しく憤る。そんな騎士にあるまじき姿を、遠巻きに眺めながら……海の向こうに消えていく二人の海賊を見つめるダタッツは、独り思案する。

(あのグランニールって人……。海賊という割には、悪辣な気配はまるで感じなかった。シュバリエルって子も。……この町で、一体何が起きている……?)

 そんな彼を、遠くから見つめる悍ましい眼光には――気づくことなく。

『テイ、コク。ユウシャ……!』

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