暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第47話 王国勇者ダタッツ
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
が現れた。
 王国騎士団の正規団員の証である、一角獣の兜。鋼鉄の盾や鎧に、青い柄の剣。その装備一式を、全て両手に抱えて。

「ダタッツ殿。例え、この国を去ろうとも――王国のために戦い抜かれたあなたは間違いなく、誉れ高い王国の騎士だ。その証明として、この装備を捧げたい」
「受け取ってくださいますか? ――帝国勇者などとは違う、王国勇者のダタッツ様」
「ヴィクトリア様、ダイアン姫……」

 彼女達の真摯な言葉に、ダタッツは僅かに逡巡し――決意を固めた面持ちで、それを受け取る。次いで、その装備を素早く身に纏い、雄々しい騎士の姿となった。

「……やはり、ダタッツ殿にはよく似合う。予備団員の鎧では、様にならんからな」
「素敵ですわ……ダタッツ様」
「――ありがとうございます」

 見惚れるように頬を染める二人に、ダタッツは僅かにはにかむと――気を取り直すように踵を返し、赤いマフラーを靡かせる。
 今度こそ、立ち止まることはない。

「――さぁ。行ってくださいませ。あなたの、思うままに」
「ダタッツ殿。――ご武運を」

 彼女達の、別れの言葉に深く頷き。黒髪の騎士は、一歩、また一歩を足を進め――この国から、立ち去って行く。
 声を殺して泣き崩れる姫君にも、その細い肩を優しく抱きしめる女騎士にも。振り返ることなく。

 一つでも多くの笑顔を守るために。自分にある力で、一つでも多くの希望を守るために。彼は、終わることのない旅へと、その身を投じて行く。

「……ありがとう」

 姫君が、涙ながらに残した最後の言葉を、耳にして。

「ローク君、良かったのか? 見送りに行かなくて」
「別に。オレはまだまだ未熟だからな。次にダタッツに会って、あいつをビックリさせてやる日までは――修練あるのみ、さ。あんたこそ弟子の門出だってのに、ここで油売ってる場合かよ」
「……その必要はない。もうあの子は――いや、彼は。見送りが必要になるような男ではあるまい」
「はは、違いねぇな」

 その頃、喧騒の中で復興に尽力していたバルスレイとロークは。互いに笑い合いながら、別れを惜しむ必要などない、と言わんばかりに。今の自分達が為すべき使命に、奔走していた。

(私は、彼の父にはなり切れなかった。だが、せめて……彼の強さだけは、信じてやりたい。もはや、私にできることはそれだけだ)

 息子のように想ってきた青年の行く末を憂う一方で、彼の選択を尊重したいとも願う。そんな矛盾した思いを胸中に抱えるバルスレイが、一瞬だけ弟子がいるであろう方角を見遣る時。

「ローク君、バルスレイ様! そろそろお昼にしませんかー!」

 遥か遠くから自分達を呼ぶ大声が轟いてくる。元気が取り柄と評判の、料亭の看板娘だ。

「よーし、そいつはそこ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ