第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第35話 笑顔にしたい
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らえた盗賊達と面会していた。ヴィクトリアと接触して、生き残った者達と。
『すげぇイイ女だったから、ふんづかまえてモノにしてやろうとしたらよ……剣を握った途端、化物みてぇに襲ってきやがったんだ』
『あいつに斬られたと思ったら……体が震えて動かなくなって、どんどん頭が回らなくなって……とにかく怖いって感情だけが、ぐるぐるしててよ……』
『気がついたら、わけもわからねぇまま暴れ回ってたんだ。今の城下町に手を出したら痛い目を見るって、わかりきってたのに』
彼らは身を震わせて、ありのままに経緯を白状していた。意地を張る余裕もないほど、精神が疲弊していたのだ。
騎士が睨んだ通り、彼らは勇者の剣に斬られて発狂してからも、その時の自分達の行動を鮮明に記憶していた。かつて帝国勇者により引導を渡された、王国騎士達のように。
盗賊達は偶然見かけたヴィクトリアの美貌に目をつけ、犯そうと近寄ったところを勇者の剣で斬られ、理性を失った狂人に成り果てた。
全ては、騎士の推察通りだったのである。
しかも盗賊達の話によると、ヴィクトリアに会ったのは城下町近くの山中。つまり彼女は、もうそこまで近づいているということなのだ。
彼女が斬らんとしているのは、父の仇である自分一人なのか。それとも、自分を匿う王国の人々も含んでいるのか。
それがわからない以上、全てを守るつもりでことに当たらなければならない。勇者の剣の呪いに掛かれば、恨みのない人間ですら容易に殺せてしまえるのだから。
虫も殺せない少年だった帝国勇者でさえ、初陣で躊躇なく敵兵を切り伏せてしまったように。
増して、彼女には父の仇という憎い相手がすでにいる。その点に付け込まれ、その憎しみを増大させられたら――もう、激情のままに誰を殺しても不思議ではない。
彼女が騎士として守ろうとしている、罪なき人々も。仕えるべき主君である、国王やダイアン姫でさえも。
(狙いが俺一人なら、俺がこの国を出てしまえば済む話だ。しかし、もしそれ以外の……王国の人々までもが斬られるようなことがあれば、彼らは為す術なく彼女の手に掛かってしまう)
国王もそれを最も恐れていたから、この騎士に未来を託したのだ。一振りの剣に、この国を滅ぼさせないために。
(それだけは、絶対に許されないんだ。……そのために、俺はここにいるんだから)
黒髪の騎士――ダタッツは、その想いを胸に踵を返し、とある場所へ向かう。
木材を運ぶ男達が何人も行き交う、その場所には――豪快に槌を振るう壮年の男性と、男達に手料理を振る舞う快活な少女の姿があった。
「よぅし、次の丸太持って来ぉい!」
「おいおいルーケンさん、ちょっとは休んだらどうなんだい」
「そうだぜ、俺達本職の大工より働いてんじゃねーのか」
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