第二章 追憶のアイアンソード
第30話 呪いの亡霊
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いた。
竜正の圧倒的な強さに、村の誰もが息を飲む。剣士として村に訪れていながら、今迄一度も「強さ」を見せずに過ごしていた少年の実力を目撃し、彼らは驚嘆していた。
――しかし、その一方で。
竜正は男達の異様さに、疑問を抱き続けていた。
(なんなんだ、こいつらは。明らかに正気じゃないし、殺意というよりは――むしろ、恐怖に駆られて錯乱しているような声ばかり上げている。ただの盗賊じゃないぞ、
こいつら……!)
すると――男達の動きに、変化が現れた。
「ア、アゥウアアア……!」
「ヒヒ、ヒギィィイィイ!」
竜正に多くの同胞を倒されたためか……呻き声が変わったのだ。何かに怯えるような声色で、彼らは狂ったように叫び出す。
その変化に村人達は震え上がり、竜正は男達の猛襲を警戒し、村人達を庇うように立つ。
「テイ、コク……!」
「……テイコク……ユウシャアアァア!」
「――ッ!?」
そして。血を吐くような男達の絶叫に、竜正は目を見張る。
その叫びを最後に、残った男達は蜘蛛の子を散らすように方々へ退散していった。
(帝国勇者……!? 今、帝国勇者と言ったのか!?)
一方。竜正は、彼らが残した言葉に衝撃を受け、その場から動けずにいた。到底、追撃どころではない。
村人達の多くは胸を撫で下ろしていたが、村長とベルタは未だに表情が暗い。
「……」
特に、男達の変化に気づいた村長は、竜正に訝しむような視線を向けていた。
(い、いや……今はそれより、村人全員の安全が第一。とにかく倒した連中だけでも縛り上げて――!?)
その視線に気づかないまま、竜正は自分が倒した男達の方へ振り返り――絶句した。
倒れた彼らのフードは風にめくられ、素顔が露わになっていたのである。そして、明らかになった彼らの素顔に――竜正は、見覚えがあったのだ。
――二年前の戦場で、竜正に……帝国勇者に斬られた騎士は数知れない。だが、全ての騎士がそれで命を落としたわけではない。
勇者の剣が持つ異様な邪気に支配され、恐怖に囚われた騎士も僅かにいたのだ。彼らは発狂して戦場から逃亡し、行方不明になったという。
そうして生き延びた彼らの行く末を知る者はいなかった。しかし今、ようやく「知る者」が現れたのである。
「そん、な」
掠れた声で呟く竜正の脳裏に、久しく忘れていた戦いの日々が蘇った。傷の痛みと恐怖に震え、自分から逃げ出して行った騎士達。
彼らは今――ここにいる。
そう。馬車を襲撃し、村人の命を奪ったのは――騎士の武具を奪った盗賊などではない。略奪が目的だったわけでもない。
帝国勇者に……竜正に狂わされた騎士達が、錯乱の果てに起こした殺戮だったのだ。
「…
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ