第二章 追憶のアイアンソード
第26話 父の面影
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う前にやることがあるだろう! 俺を倒さなきゃ、あなたの家族も危ないんだ! 子供だからとか、そんなこと関係ない! 俺は俺のために戦って来たんだ、あなたもあなたのために戦え!」
「――やはり、人を斬る悪魔の勇者には向かないな。君は」
声を荒げ、アイラックスを睨みつける竜正。そんな彼の険しい表情を、静かに見つめる王国最強の戦士は――静かに大剣を振り上げる。
「ならば望み通り、私も私が望むままに戦わせてもらおう。私のためにも――『勇者』としての君を打ち倒し、君をその『役目』から解き放つ」
「減らず口を叩くんじゃないッ!」
腰から抜刀しつつ、竜正は感情のままに斬りかかって行く。そんな彼を迎え撃つかのように、アイラックスも空へ掲げた大剣を――杭を打つかのように振り下ろした。
竜正は紙一重でそれをかわし、高速抜刀からの一閃でアイラックスを仕留めに掛かるが――
「うぐあッ!?」
「……弐之断不要、破散弾」
――強力な一撃が生む衝撃波により、周囲へ打ち出された大量の石つぶてが、竜正の全身に命中した。
なまじ紙一重でかわしてしまったがために、彼は至近距離でその猛攻を浴びてしまったのだ。小さな身体の隅々に伝わる衝撃と激痛に、少年は苦悶の声を漏らして転倒する。
「あ、ぐ……!」
「一閃に込められた力を以て、いかなる敵も粉砕する。元より小回りが利かぬなら、その一撃が生む力で、あらゆる状況を覆す。それが、王国式闘剣術の極意だ。大振りの得物だろうと、付け入る隙は与えん」
「だっ……たら!」
初撃をかわしたとしても、その威力が生む波動が行く手を阻む。小手先の技術でかいくぐれる剣術ではないのだ。
石つぶてを全身に浴び、兜を破壊された竜正は、額から流れる血を拳で拭い去り――剣の切っ先をアイラックスへ向ける。
次いで――矢を引き絞るかのように、剣を握る手を腰付近まで引き付けた。……帝国式投剣術の、体勢である。
「――できるかな。弐之断不要は鉄球さえ容易に打ち返す、比類なき攻撃力を持つ剣技だ。いかに君の投剣術が優れていようと、撃ち落とされれば意味はない」
「いいさ。――撃ち落とせやしない!」
「そうか……たいした自信だ」
竜正の剣先は、アイラックスの大剣へと向かっている。眉間を狙えば一瞬だが、そこへ撃ち込んだとしても、彼は確実に捉えてしまうだろう。
いかに強力な投剣術といえど、横からの切り払いで弾かれれば意味はない。側面からの衝撃に弱い投剣術の狙いを読まれるということは、命中率の半減を意味している。
……ゆえに、弾くために必要な武器そのものの破壊を狙う方が、勝率が高くなるのだ。
「……」
その確率と螺剣風に懸ける竜正の頬を、冷や汗が撫でる。一方、そ
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