暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第二章 追憶のアイアンソード
第25話 宿命の対決
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んだ、俺はッ! 死ねないんだよ、父さんッ!)

 一方。
 竜正もまた、その構えから迸る殺気を感じ取り――迷いを捨てなくては勝てない状況であると悟るのだった。

 少年は迷いなく、空中で勇者の剣を構え――狙いをアイラックス将軍へと定めた。

(――帝国式投剣術か。しかし、さっきの決闘でその威力と速さは掴んでいる。それに空中から放つとなれば、威力を高めるための足の踏み込みや体重移動もできん。……貰ったな)

 ルークを貫いた飛剣風の全容を思い返し、アイラックスは油断なく大剣を握り締める。確信した勝利を、実現させるために。

 そして――大剣の間合いである地上付近まで、竜正が近づいて行く瞬間。
 アイラックスは決着を付けるべく、大剣の振るう――直前のこと。

「王国式闘剣術、弐之断ッ……!?」
「――おぉおおぉおおッ!」

 突如、少年は空中で体を捻り、滞空時間の中で猛烈な回転を始める。
 そして、少年の手から離れた勇者の剣は、技を放とうとするアイラックスへと打ち放たれていった。――螺旋を、描くように。

「帝国式投剣術――螺剣風ッ!」

 飛剣風を遥かに凌ぐ威力と貫通力を持つ、螺剣風。その技により宙を駆ける剣先は――咄嗟に防御に移ろうとしたアイラックスの大剣を弾くと、鍛え抜かれた片足を貫いて行く。
 まるで、螺子を締めるかのように。

「――ぐぉおぉ、あッ!」

 予想だにしない一撃を片足に受け、アイラックスは苦悶の表情で傷口を見遣る。
 脚に付けられた螺旋状の傷からは、大量の血が噴き出していた。

「おお……あぁっ!」

 アイラックスはその痛みを噛み殺し、傷口から突き立てられた勇者の剣を、一気に引き抜いて行く。
 その勢いのまま、彼の手から離れてしまった日本刀は弧を描くように宙を舞い――持ち主の足元へ突き刺さるのだった。

「ぐ、ぅぅう……!」

 だが、無事に着地したはずの竜正は右腕を抑えてうずくまったまま、動く気配を見せない。螺剣風が持つ威力の代償を払わされた竜正は、目の前に突き立てられた勇者の剣を握ることも出来なくなっていたのだ。

「無敵のアイラックス将軍が……そんな……!」
「に、逃げろ……逃げるんだ! 勇者に……帝国勇者に勝てるわけがないッ!」

 だが、彼よりは脚を貫かれたアイラックスの方が重傷である。その結末から将軍の敗北を察した王国兵達は、アイラックスに肩を貸しながら撤退を開始していく。

「逃すかッ!」
「待て軍団長。――深追いする必要はない」
「しかし、バルスレイ将軍! ここで奴らを逃しては……!」
「――アイラックスを一度でも退け、奴らの勢いを止めたのだ。この場でなくとも、決着はつく。遠からず、な」

 そんな王国軍を背後から仕留めよう
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