第二章 追憶のアイアンソード
第25話 宿命の対決
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、あの勇敢な少年兵も、今戦っている兵達も。皆、この王国の平和と安寧を守るために戦っている。私にとっての勝利とは、帝国軍の撃滅ではない。この戦争の――終結だ」
「そうか――だが、残念だったな。俺にも、退けない理由がある。言葉で止められるとは、思わないことだ」
理想を語るアイラックスに、竜正は冷徹に剣を向ける。そんな少年の姿に、王国の将軍は険しい表情のまま――目の色に微かな憂いを滲ませる。
(……見たところ、娘に近しい年頃のようだ。こんな少年が、勇者の力を振るわされていようとは……。それも、戦争の道具として……)
一方。アイラックスの胸中を知る由もないもないまま、竜正も胸に突き刺さるような痛みを覚えていた。さっきの蹴りのせいでは――ない。
(どうしてだ。あの人を見ていると……父さんの顔が、ちらついて離れない。確かに少し似ているけど――あの人は父さんじゃない、斬らなきゃならない「敵」なんだぞ!)
勇者の剣の力により、殺意に囚われているはずの竜正は今、その奥底に封じ込められたはずの、本来の伊達竜正としての感情に苛まれていた。
戦いの中で生きるうちに、忘れかけていた父への想い。それを呼び起こすアイラックスの姿を前に、竜正は胸を締め付けられている。
剣に唆されるまま、人を斬り続けていた事実。目を背けていた、己の罪に。
(俺は……人を、この手で……!)
「どうした。退くのか。退かないのか」
「う――お、ああああぁあァァァッ!」
そして、帝国式投剣術を使うこともなく、八つ当たりのように――アイラックスへと斬り掛かって行くのだった。
「ぬぅっ、トォアッ!」
「ぐううっ……!」
竜正の――勇者の持つ超人的腕力。そのパワーに物を言わせる一閃が、アイラックスの大剣に衝撃を加える。周囲を怯ませる轟音が響き渡り、剣の風が荒野を吹き抜けた。
刹那、アイラックスの反撃の一撃が、下から切り上げるように竜正を狙う。それを受け止めた少年は、勢いを殺しきれず、空高く打ち上げられてしまった。
「……せめて。苦しみを知る前に、その魂を安らぎの空へ!」
「……!」
間髪入れず、アイラックスは上空から落下してくる竜正を狙い、大剣を両手で構える。そこに、先程までのような憂いの色はない。
互いに戦士としてこの地に立った以上、同情も侮りも不要。勇者との戦いを通し、竜正がただの「少年」とは言い難い存在であることを肌で感じ取った彼は、戦士として竜正と相対する決意を固めたのだ。
(悪く思うな――などと言うつもりはない。存分に私を恨め、憎め。その想い全て、私の墓標へ持って行く!)
弐之断不要の体勢に、迷いはない。迷いなき一閃が、少年の身を切り裂こうとしている。
(――死ねない。死ねない
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