第二章 追憶のアイアンソード
第16話 勇者の剣
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ガァアァアッ!」
雪崩の如く、野党達が踊り掛かる。理性など欠片も持たぬ、猛獣として。
「だぁああっ!」
「……ッ!」
そして、相手が猛獣であるならば。理性を保持する人間として、騎士として、毅然と立ち向かわねばならない。
その矜恃を胸に、ロークは短剣を振りかざして野党達に向かっていく。ダタッツも彼女を援護するべく、その後ろに続いて行った。
野党達の一人は、本能で敵の接近を感じ取ると、薙ぎ払うように斧を水平に振るう。
(相手の動きを、よく見る……!)
その動作を、あくまで冷静に見据えて――小さな騎士は垂直に跳び上がり、一閃をかわす。彼女の立ち回りには、憎むべき敵から学んだ教訓が活きていた。
「だぁああぁあぁあッ!」
そして、ジャンプによる勢いを利用した縦一文字の斬撃が、野党の脳天に直撃する。錆びた鉄兜は敢え無く砕け散り、野党は仰向けに昏倒するのだった。
しかし、その勝利に酔いしれる暇などない。すでに彼女の真横から、別の男が槍を突き出していたのだ。
「飛剣風ッ!」
だが、それよりも疾く。
ダタッツの鉄の剣が矢と化し、槍を粉砕してしまうのだった。
「今だ、ローク君! あとは脚を斬れ、ば……!?」
そして壁に突き刺さった剣を引き抜くと、敵を無力化するための手段を進言するのだが。
「――はぁあぁああッ!」
それを実践したのは、少女騎士ではなく――
「姫様ッ!?」
「……ローク。後で水浴び用の桶を持って練兵場に立ってなさい」
――深緑の軽鎧を纏い、優雅に舞う姫騎士だった。
「ダイアン姫……!? まさか、あのロープで!? なんて無茶を……」
「その無茶を通したあなたにだけは、言われたくありませんわ」
厳しい表情でダタッツを睨むダイアン姫は、王家の剣の刀身に纏わり付く血糊を払うと、視線を敵方へ移す。
その額からは、野党達の狂気を前にしてか――大粒の汗が滴っていた。
「なんなのでしょう、この得体の知れない狂気は……。略奪を目論む人間の眼ではありません。むしろ、何かを恐れているかのような……」
「……何かを、恐れて……」
ババルオが去り、バルスレイ将軍の監視により治安が改善された城下町に攻め入るなど、本来ならば無謀の極み。
その上、彼らの瞳からは正気も失われている。悍ましい存在から、恥も外聞も捨てて逃れようとするかのような――「恐怖」から。
その、彼らを包み込む「恐怖」は……帝国勇者として戦い抜いて来たダタッツさえ凌ぐのか。彼の強さを目の当たりにしても、野党達は戦いを止めようとはしなかった。
「ジブンの技を前にしても、一歩も退く気配がない……。つまり、それ以上の恐怖が彼らの精神を汚染している、と
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