第二章 追憶のアイアンソード
第15話 無謀な出動
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」
だが、その色はダタッツの進言により、瞬く間に戸惑いの色へと変化する。
今、自分達がいる王族の寝室は王宮内でも最高層の場所に位置している。ここから現場まで移動するのに、普通に階段で降りる以外にどのような方法があるというのか。
「ジブンにお任せを。――では国王陛下、暫しお待ちを。直ちに賊を成敗して参ります」
「ちょ、ちょっとダタッツ様……!?」
「ダタッツ!? 貴殿は一体何をしようと……!?」
そんな彼女の焦りを他所に、ダタッツは寝室の門前に置いていたロープを拾うと、一瞬の躊躇もなく窓に向かって疾走していく。
窓から飛び降りるつもりなのか。そう察した国王は咄嗟に声を上げるが、ダタッツは聞く耳を持たずに窓へ急接近する。
そして、彼の予測をなぞるように、勢いよく窓に身を乗り出し――
「さ、行こうかローク君。一番の修行は実戦だ」
「んのわぁっ!?」
「ローク!? あなたいつの間にっ!?」
――窓の上に張り付き、寝室を覗き見していた少女騎士を、窓の内側に引きずり下ろすのだった。壁に張り付き、最高層までよじ登って来ていたロークの行動力に、ダタッツは苦笑いを浮かべている。
一方、あり得ない場所からあり得ない人間が出てきたことに、ダイアン姫は目を丸くしていた。
そんな彼女の驚愕ぶりを他所に、ダタッツは腰の鞘から予備団員用の剣を引き抜き――その赤い柄と窓の縁に、取り出したロープを括り付けて行く。
そして――その状態のまま、彼は剣を振りかざし。
「帝国式投剣術……飛剣風!」
アンジャルノンを仕留めた必殺の投剣術を、撃ち放つのだった。
空を斬り、宙を翔ける鋼鉄の刃は、月明かりを浴びながら――城門近くにある井戸へと急接近していく。括られたロープを、そこに導いて行くように。
「……よし」
それから程なくして……鉄の剣の切っ先が、井戸の木柱に突き刺さる。その柄と窓の縁を繋ぐロープは、一直線に張り詰めていた。
ロープを握り、その緊張を確かめるダタッツは、深く頷くとロークの小さな体を左の小脇に抱え込む。
「え、お、おい」
「さぁ、しっかり捕まって。少し揺れるからね」
一切の無駄を許さない、流れるような動きと――今、自分が置かれている状況を目の当たりにして、少女騎士はこの先の展開を予想してしまう。
その予想を裏切ることなく、ダタッツは首に巻いていたマフラーをするりと解き、ロープの上に引っ掛ける。そして、そのマフラーに飛びつくように――ロークを抱えたまま、窓の外へと飛び出して行くのだった。
重力に引かれ、窓から落ちていく二人の身体は、ロープに引っ掛けられたマフラーを掴むダタッツの右手によって、空中で静止する。
そして――斜め下に向かって緊張された
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