番外編 少女達の未来
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んりょとなるおかたです!」
「は、伴侶!?」
その味わいに気を良くした公女殿下を一瞥したグーゼルは、何気無く彼女に占いの要件を尋ねたのだが――返ってきた返事の内容に驚くあまり、リンゴを落としそうになってしまう。手にした果実のように、少女騎士の顔も赤くなっていた。
「ははうえさまが、きのうよんでくださったほんにでてきたのです。むかし、ひめをたすけるために、とおいせかいから、ゆうしゃさまがやってきたと。もしかしたらわたしにも、そんなであいがあるかもしれないではありませんか!」
「そ、それを占い師に見て頂きたいと?」
「そのとおり! だから、グーゼルもうらなってもらいなさい!」
「な、な、んなっ、なんで私まで!?」
「……わ、わたしひとりだと、はずかしいもん」
「私だって恥ずかしいですっ!」
恥じらいに頬を赤らめ、往来の真ん中で口論する二人。彼女達は占い師が居る現場にたどり着くまで、とうとう気づかなかった。
そんな話題を町中で、それも大声で話していることの方が、遥かに恥ずかしいということに。そして、赤っ恥を晒している自分達を、町のみんなが微笑ましく見つめていたことに。
――そして、大勢の人だかりで賑わっている場所を見つけた二人は、顔を見合わせるとそこに足を運ぶ。それに気付いた人々は、公女殿下に道を開けるべく左右に大きく広がった。
「公女殿下だ! グーゼルも一緒だぞ!」
「あら! 今日も可愛らしいわね、公女殿下。公女殿下も、占いに来られたのかしら……?」
「きっと、未来の旦那様を占いに来られたんだわ。未婚の女性が占いに来る理由って、大概それだもの」
道を譲る人々は公女殿下の登場を前に、ひそひそと噂話を始める。そして、その噂話で見事に要件を言い当てられてしまった二人は、揃って顔を赤らめて俯いてしまうのだった。
やがて、彼女達の前に――占い師と思しき者の姿が現れる。絨毯の上に腰掛けたその人物は、しゃがれた声で小さく呟いた。
「……高貴なる血統を持つお方。あなた方は、どのような未来をお求めか……?」
紫のローブに身を包む老婆は、目を合わせることなく問いかける。彼女の視線は、手元の水晶玉にのみ注がれていた。
異様とも言えるその風貌に、二人は僅かに息を飲むが――すぐにクセニアが意を決したように口を開く。
「わ、わた、わたしのだんなさまを、うらなってくだしゃい!」
噛んだ。
「ほう……生涯の伴侶となる殿方の姿を、お求めか。して、そちらの騎士殿は?」
「え、えっと……私も、その……」
「――あいわかった。暫し待たれよ」
そんなクセニアの失態も、言い淀んでしまったグーゼルの恥じらいも気にしない様子で、占い師の老婆は静かに水晶玉に意識を集中させる。
やがて
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